TSMCの米拠点拡大に圧力 トランプ氏が課税強化を示唆

河本 尚真
经过
読了目安: 7 分

半導体製造拠点を巡り、米国内製造の重要性を強調

トランプ米大統領は2025年4月8日、全国共和党下院委員会の会合で、台湾の半導体大手TSMC(台湾積体電路製造)に対し、米国内に工場を建設しなければ最大で100%の税金を課す可能性があると述べた。これは、国内産業の再構築とサプライチェーン強化を目指すトランプ氏の政策方針の一環と見られる。

アリゾナへの巨額投資が明らかに

TSMCは2025年3月、米アリゾナ州に半導体工場を新設するため、総額1,000億ドル(約14兆5,000億円)の追加資金を投入する方針を明らかにした。この方針は、魏哲家会長とトランプ大統領が同席した記者会見の場で公表され、米国における生産能力の拡充に向けた両者の連携が強調された。

バイデン政権時代の支援を批判

トランプ大統領は会合の場で、TSMCがバイデン前政権から手厚い支援を受けていた事実に言及し、これに対して距離を置く姿勢を明らかにした。また、自身の政権は資金援助を行っていないことを強調しつつ、TSMCが米国内での生産体制を整備しなければ、極めて重い税制措置の対象になる可能性があると警告した。

TSMCは米国の需要に応える姿勢

一方で、TSMCの魏哲家会長は4月6日に台湾の総統府で記者会見を行い、今回の大規模な米国投資について「アメリカの取引先からの強い要望に応じたものである」と述べた。米国市場への対応は企業戦略上、極めて重要であるとの見解を示しつつ、台湾および日本における既存の投資方針には何ら影響を及ぼさないとも明言し、グローバルな生産体制を継続する姿勢を明らかにした。

政治と産業戦略が交錯する半導体政策

今回の発言は、トランプ政権が再び経済ナショナリズムを強める姿勢を取っていることを示すものといえる。サプライチェーンの米国内回帰を進める意図は明確であり、TSMCの対応が今後の米中関係や世界の半導体供給網に与える影響にも注目が集まっている。

この記事をシェア