保有数に見る投資家の分断が明確に
株式会社TOCHUが2025年3月に行った調査(対象:全国の投資家300人)によると、保有物件数の分布に大きな開きがあることが分かった。平均保有戸数は6.76戸ながら、全体の4割が「1戸のみ」を所有しており、一方で80戸以上を運用する投資家も確認されている。
この結果は、少額で安定収入を目指す層と、複数戸を扱い高利回りを狙う層との間に、明確な戦略の違いが存在することを示唆している。
新規参入の契機はコロナ禍 市場が一変
投資開始の時期を尋ねた結果、最も多かったのは2020年で51人に上った。平均開始年は2014年だが、中央値は2018年であり、新規参入者の増加が近年特に顕著である。新型コロナウイルスの拡大に伴う金融環境の変化や在宅時間の増加が、投資行動の活発化に影響を与えたと考えられる。
利回り不明が過半数 投資管理に課題
調査によると、投資物件の利回りを把握していない投資家が全体の61%を占めることがわかった。また、年間賃料収入を正確に把握していない割合も47.7%と高く、運用の実態を十分に把握していない現状が浮き彫りとなった。高利回りを達成している層も存在するが、それらは一部にとどまり、全体的な知識や管理体制の強化が必要とされる。
成功を実感しながらも客観性に欠ける傾向
全体の65%が投資の成功を自認しているが、その多くは定量的な根拠よりも感覚に基づいている。空室が少ない、節税できている、売却が容易といった要素が成功要因として挙がる一方で、収益性の低さやキャッシュフローの問題を指摘する声もある。成功とする判断基準が主観的であることが、今後の投資判断の妨げとなる可能性もある。
管理委託への期待と不満が共存
管理業務を委託している投資家は約7割にのぼるが、満足度には幅がある。高評価の理由には対応の迅速さや情報共有の丁寧さがある一方で、柔軟性の欠如や対応の不備に不満を抱くケースも報告された。投資家の期待は「コストの抑制」や「募集力」、「実績」など多岐にわたっており、管理会社への要求水準は年々高まっている。