
宇宙ビジネスの発展に向けた共同研究を発表
民間宇宙スタートアップのElevationSpaceと、繊維・自動車部品大手の豊田自動織機は、地球への再突入に耐える新しい耐熱素材の共同研究を開始した。衛星の回収を前提とした再突入カプセル用の素材開発で、両社は設計自由度と耐久性の両立を狙う。
軽量化と高性能を両立する3次元織物が鍵
豊田自動織機が保有する炭素繊維の3次元織物技術を応用し、機体各部の熱負荷に応じた密度の制御によって、耐熱性と軽量性を同時に実現する。織物の構造上、厚み方向にも繊維を配置できるため、部位ごとの最適な性能設計が可能となる。
現行技術の課題を克服へ
現在主流の熱防護技術では、最も高い熱負荷に対応した材料を機体全体に用いるため、重量とコストが膨らみがちだった。今回の取り組みでは、必要最低限の構造と素材によって機能性を確保し、ロケット打ち上げ費用の抑制にも寄与する見込みだ。
宇宙環境利用の“地球帰還”を支える技術基盤
ElevationSpaceは、無人衛星を用いた宇宙実験・製造物の地球回収サービスを展開するスタートアップで、2026年には実証機「あおば」の打ち上げを予定している。今後は継続的な打ち上げを通じ、実験成果の地球帰還を可能とする交通網の構築を目指す。
宇宙産業競争力の強化を視野に
熱防護技術は、宇宙産業の基盤技術として今後の需要拡大が見込まれる分野。両社は共同開発を通じて日本の宇宙技術の国際的地位を高める方針であり、素材・設計・回収まで一貫した民間主導のインフラ整備を進めていく構えだ。