iPS細胞から肝機能を持つ臓器を構築
大阪大学などの研究チームは、人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用して「ミニ肝臓」を作製した。糖の分解などの役割を持つ異なる種類の肝細胞を組み合わせ、塊状に培養したことで、実際の肝臓に近い機能を持つ人工臓器が誕生した。今回作られたミニ肝臓は長さ約5ミリで、肝機能の一部を再現している。
ラットへの移植で生存率が大幅改善
この人工肝組織を肝不全のラットに移植したところ、移植後30日間の生存率が約20%からおよそ50%まで上昇した。また、単一の肝細胞だけで構成されたミニ肝臓を用いた場合は、生存率が20〜30%程度にとどまったことから、複数種類の細胞を組み合わせた構造が治療効果を高めたと考えられる。
組織構成の再現が成果を支える要因に
研究チームは、異なる機能を持つ複数の肝細胞を組み合わせた点に本研究の意義があると説明している。肝臓は非常に多機能な臓器であり、再現の難易度が高かったが、細胞の相互作用を活かすことで、より自然に近い構造と機能を再現できたとされる。
臨床応用に向けた課題も残る
今後の課題として、移植後の長期的な機能維持や、安全性の検証が求められる。東京大学の専門家は、肝細胞の機能持続性や免疫反応の問題について、さらに解明が必要だと指摘している。臨床応用には時間がかかるが、重要な一歩と評価されている。
再生医療の実用化へ向けた期待が高まる
人工肝臓の作製に成功した今回の研究成果は、将来の肝疾患治療に新たな選択肢を提供する可能性がある。研究チームは、2〜3年以内の臨床応用を視野に入れており、再生医療の実用化に向けた期待が一段と高まっている。