革新的カメラが明かす深宇宙の構造
チリ・セロ・パチョン山に建設中のベラ・ルービン天文台が、史上最大級のデジタルカメラを使った試験観測の成果を発表した。公開された画像と動画は、約10時間で撮影された1100枚超の画像を基に制作されたもので、これまでにない規模で宇宙の深層構造を描き出している。
動画では2つの銀河を皮切りに、視野角を拡大して約1000万個の銀河が映し出されている。この規模は、天文台が今後10年間で観測する予定の200億個の銀河のごく一部であるが、その密度と鮮明さは既存の天文学的映像を大きく上回る。
恒星間天体の検出にも期待
天文台の主鏡とカメラの性能は極めて高く、小惑星のような低輝度の天体も鮮明に捉えることが可能だ。観測初期段階で既に2,104個の小惑星を検出し、その中にはこれまで未確認だった地球近傍小惑星が7個含まれていた。
今後、毎年数百万個規模の小天体の観測が期待されており、特に太陽系を通過する可能性のある恒星間天体の探知においても、ルービン天文台の役割は極めて重要になるとみられている。
画像合成による星雲の高精細化が進展
今回公開されたデータの中でも特に注目されたのが、三裂星雲と干潟星雲の合成写真である。678枚の画像を重ね合わせたこの構図では、微細なガス構造や塵の分布が高解像度で捉えられている。
三裂星雲には、発光するガス、反射する塵、高密度な暗黒物質が共存しており、恒星の誕生環境を詳細に分析できる領域とされる。これにより、星形成プロセスの解明が加速することが期待されている。
天の川銀河の中心観測に向けて準備進む
本観測のスタートが7月4日に控える中、天文台では最終的な調整が行われている。主力となるシモニー・サーベイ望遠鏡は、南半球からの観測に適した位置にあり、銀河中心部の高精度追跡が可能だ。
この望遠鏡は1晩で数千枚の画像を生成し、天体の明るさの微細な変動まで記録可能である。そのため、突発的な天体現象の検出や、惑星の軌道変化の監視にも応用される予定だ。
ベラ・ルービンの業績を受け継ぐ装置
名称の由来は、暗黒物質の存在を観測的に支持した天文学者ベラ・ルービン氏の功績にある。NSFをはじめとする複数の研究機関が参加するこの施設は、宇宙の根源的構造を解明するための最先端の研究プロジェクトと位置づけられている。
今後数年間で、この天文台がもたらす膨大な観測データは、宇宙の起源と構造を明らかにする鍵となる。