海底ケーブルを戦略技術に 日本が安保強化へ舵

嶋田 拓磨
经过
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安全保障の観点から経産省が技術指定を決定

経済産業省は7月7日、国際通信網の基盤を成す海底ケーブルを「重要技術」に指定したと発表した。経済安全保障を意識した措置で、今後の政策支援において重点分野と位置づける。対象には敷設や保守技術、敷設船の確保、さらには海外市場での展開も含まれ、官民で国際競争力の底上げを図る。

海底インフラが担う通信の99%が対象に

日本の国際通信の実に99%は、物理的には海底に敷かれた光ファイバーケーブルを通じて行われている。地上通信網と異なり、災害などの影響を受けにくく、国家間の通商・軍事・金融の情報基盤として不可欠な存在だ。そのため、海底ケーブルの機能停止や情報漏洩は、安全保障リスクとして深刻に捉えられている。

世界シェアで日米仏が上位も中国が急追

2024年の時点で、世界中に敷かれた海底ケーブルは約500路線にのぼり、全体の長さは150万キロメートル超に達している。NECは累積敷設距離に基づく世界シェアで21%を占め、米仏の大手と並んで主要プレイヤーとされている。一方で、中国の企業も8%に到達しており、政府の支援策と安価な供給体制を武器に勢力を拡大している。

技術・設備の老朽化で更新需要が加速

ケーブルの耐用年数は平均25年とされているが、多くは17年前後で更新される。特に2011年以降に設置された設備の交換時期が今後集中し、世界的に敷設船や技術者の不足が懸念されている。日本ではその需給逼迫を受け、敷設船の保有支援も視野に入れている。

経産省は民間と連携し競争力を強化へ

経産省は「わが国の通信基盤を守るには、民間と連携しながら戦略的に支援する必要がある」として、技術開発や海外展開を支える枠組みを整備する。今後は国家主導の支援により、海底通信分野での日本の優位性維持を図るとともに、中国などとの地政学的な競争に対応していく方針だ。

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