自由貿易の分岐点に立つEUと米国の通商戦略

河本 尚真
经过
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トランプ政権の通商政策にEUが慎重対応

アメリカのトランプ政権は各国に対し相互関税の停止措置を延長しつつ、新たな関税方針を通知している。しかしEUに対しての明確な姿勢はまだ示されていない。これに対しEUは即時の対抗措置には出ず、戦略的に交渉の継続を選んでいる。

建設的とされた協議、航空産業が焦点に

EUの通商担当委員であるマロシュ・シェフチョビッチ氏は、7月9日、協議が前向きな段階にあることを明かし、近く妥結する可能性に言及した。特に注目されるのは航空機産業で、EUが重視するエアバスを軸に、アメリカと部品および機体の関税引き下げについて暫定合意に至る見通しが浮上している。

自動車分野では米国拠点車に特例措置を提案

協議は航空機産業にとどまらず、自動車分野にも広がっている。EUは、アメリカ国内で製造されている欧州自動車に関して、関税の一部を免除するという提案を行い、現在はアメリカ政府とその内容を最終調整中だ。この案は、米国内の雇用確保EU企業の競争力維持を両立させる試みとして注目を集めている。

不確実性残る米国の対応、通商摩擦の火種も

ただし、アメリカ政府が今後どのような通商方針を打ち出すかは不透明であり、EU側は報復措置のカードを保持したまま慎重に対応している。トランプ政権の一貫性の乏しい政策運営が交渉のリスク要因として認識されている。

合意成立なるか、夏までの政治判断に注目

今後の焦点は、8月1日までに明確な合意に至るかどうかである。交渉が妥結すれば、米欧通商関係の安定化に向けた前進と評価されるが、交渉決裂の場合は再び制裁合戦の再燃も懸念される。夏までの政治的判断が両経済圏の関係を大きく左右する見通しだ。

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