モスクワ標的発言が引き起こした外交的動揺

小野寺 佳乃
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トランプ氏が電話会談で示した軍事的質問

アメリカのトランプ大統領は今月初め、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、「モスクワやサンクトペテルブルクを攻撃できるか」と尋ねたと報じられた。この発言は長距離兵器の供与を前提としたものであり、ロシアとの緊張を高める発言として国際的に波紋を広げた。

ゼレンスキー氏は即答で攻撃可能と回答

報道によれば、ゼレンスキー大統領はこの問いに対し「もちろんだ」と即答し、供与があれば攻撃可能であると明言したとされる。このやり取りは、米国の軍事支援の質と範囲をめぐる両国の意志の一致を裏付ける内容となったが、その一方で外交的なリスクを抱える結果ともなった。

ホワイトハウスが火消しに動く

この一連の報道を受け、ホワイトハウスのレビット報道官は「質問はしたが、戦争拡大を望んだわけではない」と釈明。あくまで仮定の問いであり、攻撃を推奨する意図はなかったと説明した。事態の深刻化を避けるため、火消し的なコメントが続けられている。

トランプ氏は兵器供与そのものを否定

その後、トランプ大統領は記者団に対し、長距離兵器の供与を検討していないと明言し、「ゼレンスキー氏がモスクワを標的にするべきではない」とも語った。自身の発言が外交的誤解を招いたことを踏まえ、方向修正を図ったものとみられる。

ロシアは脅威と捉え強硬姿勢を強調

一方で、ロシア外務省のザハロワ報道官は、トランプ氏による発言を「脅し」と非難し、「制裁の脅威はもはや新しくない」と強調。アメリカ側の姿勢を和平を妨げる要因と位置づけ、あくまで独自の主張を貫く構えを見せている。

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