利下げは2会合ぶり、政策金利は4.0%に
イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行は、2025年8月7日の会合で政策金利を0.25%引き下げ、4.0%とする決定を下した。今回の利下げはことし5月以来で、2会合ぶりとなる。背景には、米国の関税強化による経済的な悪影響への対応がある。
今回の決定により、企業や家計の借入コストが軽減される見通しで、国内経済の支援策としての効果が期待されている。金融当局は、依然としてインフレ水準が目標を上回っているとしながらも、政策判断の優先順位を景気対策に置いた形だ。
国内成長率は2か月連続でマイナスに
英国家統計局のデータによれば、国内総生産(GDP)は4月と5月の両月でマイナス成長を記録した。特に製造業を中心に生産活動が低下しており、自動車産業や関連部品の輸出などで打撃が広がっている。
イングランド銀行はこれを踏まえ、経済の下振れリスクが無視できないとの判断に至ったとみられる。実際、トランプ米政権が打ち出した輸入関税の引き上げが貿易を通じて英国経済に波及しており、企業の業績や設備投資にも影響を及ぼしている。
インフレ率は目標超も緩和傾向を維持
2025年6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.6%の上昇となり、前月よりも伸び幅が拡大した。ただし、イングランド銀行は声明の中で「インフレは長期的には鈍化の傾向を保っている」との見解を維持し、急激な物価上昇のリスクは後退しているとの認識を示した。
その一方で、政策金利の過度な引き下げは通貨安やインフレ再燃を招く可能性もあり、今後の金融政策は慎重な運用が求められる。
米国の関税政策が金融判断に影響
今回の利下げには、米国のトランプ政権が打ち出した関税政策が大きく影響している。とりわけ自動車関連製品などに対する輸入課税の強化は、英国の輸出産業に直接的な痛手となっている。
イングランド銀行は声明で「貿易政策をめぐる不確実性は一定程度解消されたが、地政学的リスクは依然として残る」とし、今後も経済への影響を注視する姿勢を示している。
欧州各国の政策にも連動する動き
イギリスの動きに対し、欧州中央銀行(ECB)は7月の会合で政策金利の据え置きを選択した。各国中央銀行は、米国発の経済政策による波及効果を注視しながら、それぞれの状況に応じた政策判断を進めている。
今後の動向次第では、イングランド銀行が再び利下げに踏み切る可能性もあるが、その判断はインフレ率の推移と成長率の回復度合いに左右されることになる。