公務員給与、官民格差是正へ大胆な引き上げ勧告

小野寺 佳乃
読了目安: 8 分

新基準導入で民間との格差が顕在化

人事院は2025年度の給与改定において、公務員給与の比較基準を大幅に見直した。これまでの調査対象であった「従業員50人以上」の企業から「100人以上」に変更し、本府省採用の職員に関しては「東京23区に本社を置く1000人以上の企業」と比較。これにより、公務員の月給が民間平均を1万5014円下回っていた事実が明らかになり、是正措置として給与の引き上げが勧告された。

平均3.6%超の賃上げ、全国で波及効果に期待

勧告内容は、月給の平均3.62%(1万5014円)増、ボーナスは年4.65か月分とするもので、賃上げ率が3%を超えるのは34年ぶりの大幅改定となる。これにより、行政職全体の平均年収は714万3000円となり、前年比で26万3000円の増加が見込まれる。

給与の改定は、民間の賃上げ動向を踏まえたものであり、賃金上昇が全国的に広がることを想定した政策的意図も読み取れる。

若手人材の待遇改善が制度改革の核に

特に注目されるのは、若年層の待遇改善だ。大卒総合職の初任給は24万2000円、高卒一般職は20万300円とする内容が盛り込まれた。地域手当を加えると、本省採用の大卒総合職は30万1200円に達し、史上初めて30万円の壁を越える水準となる。

この措置は、採用難が続く国家公務員制度において、民間との競争力を取り戻すための対策といえる。

中堅以上への待遇改善で士気向上を狙う

勧告では、若手だけでなく中堅・幹部層に対しても配慮がなされた。新たに本省の幹部に対して月額5万1800円の手当を支給するほか、課長や室長、局長といった管理職の年収を約90万~120万円引き上げる案も盛り込まれている。

こうした広範な賃上げ措置は、業務の高度化や責任の重さに見合った報酬体系を築く狙いがある。

政権は受け止め、今後の政策議論へ

石破首相は勧告受領後、「人材確保と賃上げ促進の両面から意義ある内容」と評価した。政府として今後の制度整備に反映させる構えを示しつつ、地域経済へのポジティブな影響を期待する考えも表明している。

人事院の川本総裁も、「賃上げの流れを適切に反映し、公務員制度の魅力を高める内容である」と強調した。今後の政策的対応と予算措置が注目される。

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