日本の大豆生産が抱える課題
日本の大豆は品質面で高く評価される一方、収量が低いため安定供給が難しい。平均収量は10アールあたり170キロ程度で、主要輸入元である米国やブラジルと比べると著しく劣る。このため、国内の食品用大豆需要の約8割は輸入に依存している。
伝統品種に共通する遺伝子が判明
農業・食品産業技術総合研究機構は、国内外462品種の解析により、国産大豆の粒の大きさを左右する遺伝子配列を発見した。兵庫県の「丹波」や山形県の「だだちゃ豆」など、日本を代表する在来品種に共通して存在することが確認された。
米国品種との交配による取り組み
米国品種は小粒であるものの収量が高い特徴を持つ。農研機構はこれまでに米国品種と交配した新品種「そらひびき」を開発してきたが、品質の安定性に課題があった。今回の遺伝子発見は、収量と品質を両立させるための科学的な裏付けとなり、従来の問題点を克服する道を開いた。
品種改良の新たな展望
発見された遺伝子を利用することで、国産品種の品質を維持しつつ収量を増やす品種改良が可能になると期待される。これにより、豆腐や納豆など日本の食文化を支える食品への安定供給体制の強化が見込まれる。
国内自給率向上に向けた意義
大豆の輸入依存度を下げることは、日本の食料安全保障に直結する課題である。今回の成果は、国産大豆の自給率を高める取り組みの大きな一歩と位置づけられる。農研機構は今後も研究を継続し、収量と品質の双方を満たす新品種の開発を推進するとしている。