黄金色に染まる田んぼで収穫始まる
福島県飯舘村長泥地区で9月24日、営農再開後初めて市場出荷を目指す稲刈りが実施された。農家や村の職員ら約30人が参加し、約2500平方メートルの田んぼで県独自の品種「里山のつぶ」を収穫した。秋晴れの空の下、刈り取られる稲は原発事故後の歩みを象徴する存在となった。
基準値を満たせば市場流通可能に
収穫された米は、放射性物質の濃度を測定した上で、国の基準値を下回れば出荷が可能となる。2023年から行われてきた試験栽培では安全性が確認されており、本格的な営農再開を支える根拠となった。市場に並ぶのは事故後初めてで、消費者の関心も高まっている。
所有者の喜びと願いが明らかに
田んぼを所有する庄司喜一さん(78)は、避難先の福島市から作業に臨み「ようやく出荷できる段階になりうれしい。村内外の人々に味わってほしい」と笑顔を見せた。自身の田畑が再び地域社会の一部として機能し始めることに強い意義を感じている。
帰還困難区域からの転換が進展
長泥地区は原発事故の影響で長く帰還困難区域に指定されていたが、2023年5月に復興拠点として避難指示が解除された。その後、営農再開の準備が進み、今回の稲刈りは地域再建の新たな局面を示している。
地域再生に向けた節目となる出荷
今回の収穫と出荷準備は、単なる農業再開にとどまらず、地域社会の復興に大きな意味を持つ。事故後に失われた信頼を取り戻す過程であり、福島の再生に向けた重要な節目として位置づけられている。