小型漁船のスルメイカ漁、枠超過で初の停止命令へ

小野寺 佳乃
読了目安: 7 分

異例の豊漁が制度の壁に直面

今シーズンのスルメイカ漁で、全国の小型漁船による漁獲量が割り当て枠を上回り、水産庁は10月末までに停止命令を出す見通しとなった。記録的不漁が続いてきたスルメイカが今期は一転して豊漁となり、資源管理制度が導入された1990年代以降で初の措置となる。

枠拡大でも追いつかぬ漁獲ペース

スルメイカの漁獲は年初から好調で、小型イカ釣り漁船に割り当てられた当初の漁獲枠2,800トンは、9月までに4,900トンへと引き上げられた。しかし勢いは止まらず、10月15日時点で実績は5,300トンを超過。これにより、漁期途中での操業停止が決定的となった。漁獲枠を超えて操業が続けば、資源回復を目的とする制度の根幹を揺るがしかねないとの判断だ。

スルメイカ資源の変動と背景

スルメイカはここ数年、海水温上昇や回遊経路の変化により不漁が深刻化していた。水産庁は資源を保護するため、漁法ごとに漁獲可能量(TAC)を設け、全国規模での上限管理を実施している。だが今年は海洋環境の影響で群れの回遊が増え、例年を上回る漁獲が続いた。豊漁が漁業者に恩恵をもたらす一方、制度上の制限が壁として立ちはだかる構図となった。

他の漁法は操業継続へ

今回の命令は小型漁船によるイカ釣り漁に限定されており、沖合底引き網や大中型まき網などの漁法では枠を消化していない。スルメイカ全体の漁獲枠は9月に当初の1万9,200トンから2万5,800トンに拡大されており、他の漁業形態では当面、操業を継続できる。水産庁は漁法間の共有枠(約5,700トン)を活用し、小型漁船への一部再配分も検討している。

持続的利用に向けた今後の課題

停止命令の発出は、漁業管理の厳格化を象徴するものとなる。資源量が回復傾向にあるなかで、枠の設定や分配をどう調整するかが今後の焦点だ。漁業関係者からは「資源を守るためには必要な措置」と理解を示す声の一方、「地域経済への影響は避けられない」との懸念も上がっている。

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