民放の信頼回復へ国が関与強化を検討
総務省は23日、フジテレビの不祥事を受けて民間放送事業者のガバナンス強化策を示した。検討会で提示された骨子案では、各社の自主性を尊重しつつ、重大な不祥事発生時には国が報告を求める制度を導入する方針を明示。放送免許への条件付与など、国による限定的な監督強化も含まれる。目的は企業の自律を前提に、放送業界全体の信頼回復を図ることにある。
重大不祥事時の報告義務を明文化へ
骨子案によると、経営基盤を脅かすような深刻な不祥事が起きた場合、一定の基準に基づき総務省への報告を義務化する方向で調整が進む。報告を受けた国は必要に応じて改善措置の実行や放送免許の条件変更を求めることも検討する。制度設計では、報道内容への干渉を防ぐため慎重な運用が求められるとしている。
民放連は「行政関与は抑制的に」と反発
一方、日本民間放送連盟(民放連)は、「行政による過度な関与は放送の自由を損なうおそれがある」として慎重姿勢を示した。民放連関係者は、「改善が進まない場合の免許期間短縮案には困惑している」と述べ、あくまで各局の自主自律を重視する姿勢を強調。総務省側は「行政の関与は極めて限定的になる」と説明している。
業界団体への対応強化要請も盛り込む
骨子案は、民放各社に加えて業界団体である民放連の役割強化も求めた。人権尊重や情報開示の推進、問題を起こした局への助言、さらには除名などの処分権限の行使までを例示し、業界内での自浄能力向上を促している。平時からの透明性確保と組織体制整備が不可欠とされる。
来年1月に最終提言を公表へ
検討会は11月に報告書案をまとめ、意見募集を経て2026年1月に提言を発表する予定。放送行政の在り方を巡り、国と業界の緊張関係が続く中、制度の運用範囲や監督権限の線引きが焦点となる。報道の自由と公共性の均衡が問われる局面となりそうだ。