サイバー攻撃の影響が長期化
通販大手アスクルが受けたサイバー攻撃の影響が続いている。10月19日に発生したランサムウエア感染により、同社の物流システムが停止。オンライン受注ができない状態が10日以上続くなか、供給網の混乱が医療現場や関連企業に波及している。
攻撃の背後には「ランサムハウス」と名乗るハッカー集団の存在が確認された。
1.1テラバイトのデータ窃取を主張
セキュリティー関係者によると、「ランサムハウス」は30日夜に犯行声明をダークウェブ上で公開した。声明では1.1テラバイト分の企業データを盗んだと主張し、その一部をインターネット上に公開したとされる。
アスクルと顧客とのやり取りを含む内容が含まれている可能性があり、情報流出の範囲を特定する調査が進められている。
通販・物流業界への波紋
物流システム停止により、傘下の物流企業だけでなく、良品計画など他社のECサイトにも障害が波及した。受注停止が長引く中、他のオフィス用品通販大手には注文が殺到し、新規会員登録や配送処理の遅延が発生している。
企業の供給網の脆弱性が改めて浮き彫りとなった。
医療・介護分野の供給危機
アスクルは医療現場向けに高品質な消耗品を低価格で提供することで知られ、病院や診療所の間では主要な仕入れ先となっている。中には同社への依存度が極めて高いクリニックもあり、備蓄切れの危機に直面している施設もある。
医療関係者からは「代替調達先の確保が難しい」との声も上がっている。
段階的な復旧と安全確認
29日からは佐川急便による試験配送が始まり、一部法人向けに商品出荷を再開した。FAXを用いた注文受付など、限定的な形での業務復旧を進めている。
アスクルは「現時点で個人情報流出は確認されていない」と説明し、システムの再稼働と情報保護対策の強化を並行して進めている。