地域金融機関・いわき信用組合で浮上した組織的な資金提供の構図を検証

嶋田 拓磨
经过
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地域信用組合における反社会的勢力への資金提供実態が浮上した影響

福島県いわき市に所在する地域金融機関が、反社会的勢力との長期にわたる資金提供関係を抱えていたという問題が明らかになった。これにより、同組合の経営体制や信頼性に対し厳しい評価が下されており、地域金融全体への波及効果も懸念されている。金融機関が“地域密着”の信頼を基盤としているだけに、その構造的な破綻は地域社会にとっても重大な意味を持つ。

街宣活動を抑える支払いから始まった癒着関係の歴史が判明した構図

同組合の調査報告書によれば、1990年代には反社会的勢力関連人物に対し数億円を「解決料」名目で支払っていた。街宣車を用いた抗議活動を抑えるための費用という説明のもと、地域金融機関が外部勢力と癒着していた実態が浮上した。旧会長に対しての聞き取りでは、理事長就任後の2004年~2016年で合計約10億円前後の支払いがあったとの説明もあった。このような癒着関係が、後の融資構図に深く影響を与えていたとみられる。

不正融資の規模が200億円超に及び、無断借名や迂回融資が確認された内容

第三者委員会の別報告では、同組合が2004年以降に実施した不正融資は1293件、総額約279億8400万円にのぼるとされた。うち、実体のない企業を使った迂回融資や、預金者名義を無断で借用した無断借名融資の件数は1239件・229億円超。さらに、2018年以降には暴力団関係の紹介を受けた融資が9件・約28.5億円に上った。こうした不正が長期間にわたり発覚せず、組織的に進行していた点が際立っている。

組合の新経営陣が謝罪と刷新方針を示したが、信頼回復の道のりは遠い状況

同組合は記者会見及び総代会にて、理事長が「すべてのうみを出し尽くし、マイナスからの再出発」と表明し、再発防止に向けた取り組みを宣言した。しかし、会場には「もう信用できない」といった組合員の厳しい声も聞かれ、40年以上取引を続けてきた企業の関係者からも「気づいていないわけがない」との指摘があった。地域の信頼を取り戻すためには、制度改革だけでなく文化的な改革も不可欠とされる。

今後の監督強化と地域金融機関の信頼維持への影響が注視される

この事案を受け、金融監督当局や地域金融機関には、ガバナンス強化・透明性の確保という課題が改めて突きつけられている。実際、監督当局からは「経営管理態勢・法令等遵守態勢に重大な問題」があったとの指摘もなされており、業務改善命令が出されている。地域金融機関が地域住民の信用を損なった場合、地域経済や地域社会全体が影響を受けるため、信頼回復に向けた取組みが喫緊の課題である。

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