ソフトバンクG、巨額AI構想へ布石 資産売却で投資加速

小野寺 佳乃
読了目安: 7 分

7~9月期は黒字維持も収益構造に課題

ソフトバンクグループ(SBG)は2025年7~9月期に3四半期連続で黒字を確保したが、前年同期の1兆1796億円からは減益となった。AI関連株の調整により資産評価が伸び悩み、収益の安定性が課題となっている。市場では、生成AIへの過剰依存を懸念する声も出ている。

エヌビディア株を売却しオープンAIに再投資

SBGは10月、米エヌビディア株を約9,000億円で全株売却したと発表。得た資金を米オープンAIへの追加投資に充てる方針で、総額300億ドル(約4兆6000億円)規模の出資を計画している。後藤芳光CFOは会見で「オープンAIは他社を凌駕する力を持つ」と語り、AI市場への強気姿勢を示した。

債務拡大と信用リスクの上昇

巨額投資に対応するため、SBGはドル建てとユーロ建てで総額4,300億円超の劣後債を起債。ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、今後12〜18カ月で最大250億ドルの資金不足に陥る可能性があり、追加で100億ドル規模の社債発行が必要とされる。信用リスク指標(CDS)は249ベーシスポイントと7月以来の高水準を示している。

株価急騰後にボラティリティ最大化

年初来、SBG株は約2.5倍に上昇し、時価総額は30兆円超で国内2位に浮上した。しかし、10月下旬以降はAI銘柄の下落を受けて一時20%下落。60日間のヒストリカルボラティリティはパンデミック期以降で最高水準に達した。投資家心理の変化が今後の株価を左右するとみられる。

巨額AI構想の行方と成長の持続性

SBGが主導する「スターゲート構想」は、AIサーバーや自社半導体を核とする4年間・5,000億ドル規模の投資計画である。高市政権の経済連携プロジェクトや米国との大型案件にも関与しており、エネルギー分野での共同投資も視野に入る。ただし、金利上昇やAI市場の調整局面が長引けば、同構想の実行に影響が及ぶ可能性もある。

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