企業連携進む中継輸送、業界の人手不足対策として注目を集める

小野寺 佳乃
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実験開始に向けた準備状況が発表

東京海上ホールディングスと運送大手4社は、企業間での車両交代方式を採り入れた中継輸送の実証実験を2025年2月に開始する。今回の取り組みは、長距離運行にともなう運転手の負担を軽減し、勤務環境の改善を目指すものとして位置付けられている。運転手が出発地に戻れる運行方式を確立することで、離職の抑制と業界全体の人材確保につなげる狙いがある。実証は計画段階から企業間で連携し、運行の安全性と効率性を確保する体制が組まれた。

運送大手の協力体制が形成

今回の実験には、西濃運輸、福山通運、名鉄NX運輸、トナミ運輸の4社が参加し、東京海上ホールディングスが保険面の調整とリスク管理を担当する。企業間での情報共有を進めるため、運行データの収集方法や車両交換時の手順が整理された。また運転手が別会社の車両を扱う際の安全確認を徹底するため、教育内容の見直しも行われた。こうした共同作業により、中継輸送の実施に必要な基盤が整備されつつある。

実証区間と交代地点の詳細が判明

実証は2つのルートで行われ、各ペア企業の運行方法が異なる構成となる。西濃運輸と福山通運は、神奈川県藤沢市や厚木市と大阪府堺市を結ぶ区間で車両交換を実施する。名鉄NX運輸とトナミ運輸は、東京都江戸川区と大阪府東大阪市を結ぶ路線を担当する。いずれも中継地点は浜松市に設定され、双方の運転手がそこで車両を入れ替えて残りの区間を運行する方式が採用された。期間は2か月で、運行状況を詳細に分析し、制度の有効性を測定する。

事故時の責任整理に向けた検討が進行

複数企業で構成される中継輸送では、事故発生時の責任範囲を明確化する必要がある。東京海上ホールディングスは、参画企業の運行情報や時間データを基に、リスクの把握と事故時の対応方針の検討を行った。保険制度の整理も含めた取り組みにより、実運用での不安材料を減らす狙いがある。こうした体制整備により、中継輸送の安全性と信頼性を高める基盤が作られている。

業界の構造変化への影響が注目

物流業界では、2024年4月に施行された時間外労働規制が影響し、長距離運転手の確保が難しくなっている。中継輸送は、運転時間の短縮と勤務体系の改善につながる方式として注目され、実証結果によっては業界全体で導入が広がる可能性がある。運転手の高齢化や人材不足の解消に寄与する取り組みとして、今後の動向が重要視されている。今回の実験の成果が、物流の持続性を高める契機となることが期待される。

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