国内最大手造船所を視察し示された再生方針が判明
国土交通相の金子恭之氏は11月22日、香川県丸亀市にある今治造船の主要拠点を訪れ、政府が進める造船業強化策の方向性を説明した。政府が21日に決定した経済対策には、造船分野で官民合計1兆円規模の投資を行う方針が盛り込まれており、その実行に向けた工程表の策定が進められている。視察後、金子氏は「年内に造船分野の再生計画を取りまとめる」と述べ、長期的な産業強化を図る意思を示した。視察には今治造船の檜垣幸人社長も同席し、業界の現状と今後の投資ポイントが意見交換された。
建造量倍増を目標とする長期計画の詳細が発表
政府は2035年までに建造量を現在比で約2倍へ引き上げる方針を示しており、この数値目標が今後の施策の中心となる。建造量の拡大には大規模設備の導入と生産工程の効率化が重要視されている。日本の造船シェアは24年時点で**13%**まで低下し、中国・韓国に大きく水をあけられている状況だ。この厳しい環境を踏まえ、日本が再び競争力を取り戻すためには、技術刷新と資本投入を同時に進める必要があるとされる。
官民の大型基金創設で設備投資が進む見通しが判明
政府は10年間の基金を創設し、3500億円規模の予算を用意する。業界団体も同額を拠出する方針で、合わせて7000億円規模の資金が設備増強や研究開発に充てられる。特に生産性向上を目的とした大型クレーンや自動化技術の導入が計画に含まれ、造船現場の負担軽減と工期短縮が期待されている。金子氏はこれらを「長期的な競争力確保の基盤」と位置づけ、官民が連携して取り組む姿勢を強調した。
アジア主要国との比較で明らかになった課題の影響
日本の造船コストは中国と比べて依然として高く、特に鋼材費が約2倍に上る点が大きな負担となっている。国交省の調査では、中国で建造される船舶が日本より約2割安いとの結果が示され、コスト差が競争力低下の一因となっている。また、敷地面積の不足や人材不足などの構造的課題も指摘されている。金子氏は「規模の拡大が欠かせない」と述べ、施設の集約や拡張の必要性を示した。
造船所の最新設備や取り組みが示した改善点の影響
視察先の今治造船では、610メートル級の建造ドックや、工場のデジタル化・省力化の取り組みが紹介された。複数の船舶を同時に建造できる大規模ドックは日本の競争力向上の鍵とされ、効率的な生産体制の構築につながるとみられている。檜垣社長は建造量倍増への意欲を述べ、業界全体で協力して課題解決を進める考えを示した。視察内容からは、国内造船業が再び国際市場で存在感を示すための具体的な方向性が浮かび上がった。