米市場で金利と株価が対照的に推移し不安定さ強まる局面

嶋田 拓磨
经过
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金融政策判断を前に市場が揺れる状況

8日の米金融市場は、FOMCの開催を目前に控え、複数の資産が異なる方向に動く複雑な地合いとなった。投資家は25ベーシスポイントの利下げが提示されるとの認識を共有する一方、今後の政策方針や金利見通しに対して警戒を強めている。市場参加者の間では、利下げが続くとの期待と、緩和ペースが抑制される可能性の双方が意識され、取引の方向感がつかみにくい状況が続いた。

通貨市場で米ドルが優勢となる展開

為替市場では、米ドルが主要通貨に対して強含みで推移した。米国経済指標が底堅さを示すなか、米ドルの相対的な優位性が意識されやすい地合いとなった。円は全面的に売られる展開となり、東北地方で発生した強い地震と津波警報の発令が一時的な動揺を誘った。市場では、米金融政策への注目度が突出しており、他国中銀の決定が相場に及ぼす影響は相対的に小さかった。

債券市場で長期金利が上昇しインカーブが拡大

米国債市場では、長期金利が上昇した。10年債利回りが9月以降の高水準に達し、短期金利も上昇するなど、利回り全体の上昇圧力が鮮明になっている。2年債と10年債の利回り差は58ベーシスポイントとなり、インカーブ拡大が進んだ。背景には、FRBの利下げ姿勢に強弱が混在しており、タカ派的なメッセージが示される可能性への警戒がある。投資家は、ドットチャートや議長会見を通じて示される政策意図を注視している。

株式市場で調整圧力が高まり主要指数が下落

米株市場では、ダウ平均が215ドル下落し、最高値圏にあることを意識した慎重な姿勢が広がった。ポジション整理の売りが優勢となり、主要指数は軟調な値動きとなった。S&P500は複数の業種で値を下げ、ナスダックもテクノロジー株を中心に反落した。個別ではP&Gやナイキ、アムジェンが売られ、3Mもアナリスト判断の引き下げを背景に下落した。一方で、ディズニーとボーイングは上昇し、エヌビディアは中国向けAI半導体出荷の報道を材料に買いが入った。

金と原油がともに軟調となり商品市場も重い動き

商品市場では金先物が値下がりした。米長期金利が上昇し、利息を生まない金の投資妙味が低下したためである。市場ではFOMCの結果を見定めたいとの姿勢が強く、積極的な買いは入りにくかった。原油は4営業日ぶりに反落し、利益確定の売りが優勢となった。前週の上昇幅を背景に投資家がポジションを調整したほか、ウクライナとロシアの協議動向や需給不安が重しとなった。

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