月面開発へ重心を移した戦略転換
米国の実業家であるイーロン・マスク氏は、自身の発信を通じて、宇宙開発の主軸を火星から月へと移す方針を示した。これまで同氏は、人類が恒久的に居住する火星都市の建設を長期目標として掲げてきたが、当面は月面都市の実現を優先する姿勢を明確にした。背景には、実行可能性と時間軸を重視した戦略的な再評価があるとされる。
火星輸送の制約が示す現実的課題
マスク氏は、火星探査における最大の制約として、地球と火星の公転周期を挙げている。両惑星の位置関係から、火星への打ち上げ機会は約26カ月ごとに限定され、片道の移動にはおよそ6カ月を要する。こうした条件下では、人員や物資を継続的に送り込むことが難しく、都市建設には長期の時間を必要とするという。
月面都市が持つ時間的優位性
一方、月への移動は打ち上げ頻度が高く、移動時間も数日程度に抑えられる。マスク氏は、月であれば約10日ごとに打ち上げが可能で、片道2日程度で到達できる点を強調した。この利点により、インフラ整備や居住拠点の拡張を段階的に進めやすく、月面都市は10年以内に実現できる可能性があるとしている。
深宇宙探査の拠点としての月
米紙の報道によると、マスク氏は投資家に対し、月面開発を将来の深宇宙探査に向けた中継拠点として位置づけているという。月で技術や運用経験を積み重ねることで、より遠方の天体探査や火星開発への基盤を整える狙いがある。月面都市は単なる居住地ではなく、宇宙活動全体を支える戦略的拠点とされている。
アルテミス計画と残る課題
NASAが主導し、日本も参加する月探査のアルテミス計画では、スペースXが月面着陸用宇宙船の開発を担っている。しかし、この計画では開発の遅れが指摘されており、月面都市構想と並行して技術的・運用的な課題への対応が求められている。