AIによる精神疾患支援ソフトが薬事承認を取得
厚生労働省は、脳画像をAIで解析してうつ病の診断を支援するソフトウェアに対し、プログラム医療機器としての薬事承認を与えた。開発元は**京都府の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)**で、fMRI画像をもとに診断の補助を行う新技術として医療現場の関心を集めている。
目次
医師の主観に頼らない診断補助の必要性が背景に
従来、うつ病は気分の変調や睡眠障害といった主観的な症状をもとに医師が判断しており、診断には個人差が生じやすかった。また、統合失調症や双極性障害との識別が難しいという課題もあった。今回のAIソフトは、こうした診断の曖昧さを解消することを目指している。
約3000人分の脳画像をAIが学習し特徴を抽出
研究チームは2008年から10年にわたり、うつ病患者944人と健常者2031人の脳活動をfMRIで記録し、そのデータをAIに学習させた。AIは脳回路の特徴的なパターンを認識し、画像解析によってうつ病の可能性を数値化。このモデルは、約70%の精度でうつ病の有無を判別する能力を示している。
MRI検査に追加可能な仕組みで患者の負担軽減
この診断ソフトは、通常のMRI検査に10分間のfMRI撮影を追加するだけで使用できる。従来通りの検査の流れに組み込めるため、患者に新たな負担をかけずに診断補助情報が得られる点が特長となっている。臨床現場への導入もしやすい仕様といえる。
精神医療の新基準へ向けた第一歩となる可能性
今回の薬事承認は、精神医療分野におけるAI技術の臨床応用の前例となる。客観的な脳活動の数値化が、今後の診断基準や医療体制に影響を与える可能性もある。依然として医師の判断が必要ではあるものの、診断の精度と信頼性の向上に資する一歩として評価されている。