雇用増で利下げ観測後退、円相場に影響も

市原 陽葵
经过
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米労働市場、予想上回る堅調な伸びを記録

アメリカ労働省が発表した2025年6月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比14万7000人増加し、市場予測の10万人超を明確に上回った。この結果は、経済の減速懸念が広がる中でも労働市場が依然として底堅いことを示している。

政府職員の減少と州政府の雇用拡大が判明

トランプ政権は財政支出の抑制を進めており、2025年1月以降の連邦政府職員数は6万9000人減少している。一方で、6月単月では州政府が4万7000人の職員を増員し、全体の雇用を下支えする構図が浮き彫りとなった。州政府による吸収が一時的な雇用安定の要因となっている。

為替市場で円売りが進行、一時145円台に

ニューヨークの為替市場では、米国の雇用統計を受けてドル買い・円売りが強まり、円相場は一時1ドル=145円付近まで値を下げた。発表前の143円台後半から約1円の円安が進んだ背景には、労働市場の底堅さからFRBが利下げを見送るとの見方がある。

7月利下げの確率、市場予想で5%未満に低下

CMEグループが公表したデータによると、7月29日からのFOMC会合でFRBが利下げに踏み切る確率は、発表直前には23%超だったが、統計発表後には5%以下に低下した。一部の理事は利下げを支持する姿勢を示していたが、労働市場の好調がその動きを鈍らせる要因となっている。

利下げの可能性が遠のくなかでの政策対応に注目

FRB内部では雇用の伸び鈍化を重視する声もあるが、直近の統計結果はそのシナリオを後退させている。インフレ抑制と景気後退回避の間で、金融政策のかじ取りはさらに難しさを増している。市場は今後の物価指標や企業収益動向をもとに、再び利下げの可能性を織り込む可能性がある。

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