船舶不正問題に対応、再発防止に本腰

小野寺 佳乃
読了目安: 6 分

慢性的人手不足が不正行為の一因に

旧日立造船の流れを汲むカナデビアでは、2023年に相次いで発覚した船舶用エンジンの不正問題について、組織全体の構造的課題が明らかとなっている。開発・製造部門では人員不足が常態化しており、それが不正の温床となった。経営側は体制の甘さを認め、企業倫理の再構築を急ぐ。

人事制度改革と増員で信頼回復へ

再発防止策として、同社は2026年度末までに人員を10%以上増加させる計画を示した。また、人事制度の見直しによって給与や労働環境の改善にも踏み込む。これにより、技術現場の負担を軽減し、コンプライアンス意識を定着させるとともに、長期的な人材定着を図る。

海外売上拡大で企業基盤の強化を図る

カナデビアの海外売上高比率は約50%に達しており、今後はそれを60%以上に引き上げる戦略を掲げている。中心となるのは、廃棄物処理分野での海外展開であり、新たな成長市場としてアフリカ地域への進出が決定された。売上拡大と内部改革を両輪で進めることで、企業体質の転換を目指す。

モロッコでの焼却施設整備が第一歩に

進出先として想定されているのはモロッコで、2025年度中の事業開始を目指す。欧州などで導入が進むごみ焼却発電のノウハウを活用し、アフリカにおける環境インフラ整備に貢献する。将来的には他のアフリカ諸国にも展開する構想を持っており、事業拡大の起点となる計画だ。

カーボン・クレジットを用いた収益モデルを構築

焼却に伴う二酸化炭素の削減量をカーボン・クレジットとして取引し、処理コストの実質的負担を軽減する仕組みも導入される。焼却処理は短期的には埋立方式に比べコストが高いが、同社は長期的な経済性と環境性の両立を可能にするとしている。持続可能な廃棄物処理モデルとして注目される。

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