資源回復でも調整進まず 漁獲枠拡大に足踏み

市原 陽葵
经过
読了目安: 6 分

将来見据えた制度整備に各国の思惑が交錯

富山市で行われた会合では、太平洋クロマグロの資源管理の長期的方針をめぐる話し合いが行われた。焦点となったのは、資源量の水準に応じて漁獲枠を自動的に調整する新たな制度の枠組みである。制度化されれば、急激な資源変動に対する調整が不要となり、実務的な負担も軽減されると期待されていた。

過去の合意から一歩進めた議論展開も決裂

クロマグロ資源に関する規制は長らく厳しい状態が続いていたが、近年は一定の回復が認められており、昨年の会議では漁獲枠の大幅な拡大が実現している。今回の協議は、その次の段階として、制度面の安定化を目指すものだった。しかし、議論は進展を見せることなく、具体的な成果は得られなかった。

自動ルール化で見解対立、日本は緩和を主張

日本は、将来的な増枠を想定し、緩やかな増加基準を制度に盛り込むよう主張した。資源が一定以上に達した段階で自動的に枠を広げることで、業界の安定性を高めたいという意図があるとみられる。だが、米国や他の参加国は過去の乱獲再発を懸念し、より厳格な基準を求め、合意には至らなかった。

合意は持ち越し、来年の協議が決定事項に

協議の場では、今回の議題について来年以降も継続的に審議を行うことが確認された。これにより、太平洋クロマグロの漁獲管理は依然として従来の体制のまま継続されることとなった。ルールの標準化と資源保全のバランスをとるには、さらなる交渉が不可欠となる。

制度未整備が国際漁業の不確実性を露呈

今回の結果は、国際的な漁業協調の難しさを改めて示すものとなった。各国が自国の水産業を守る姿勢を見せる一方で、共通のルール策定には時間を要することが明確となった。持続可能な漁業実現のためには、より高度な合意形成能力が問われている。

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