セブン買収提案撤回、独禁法と交渉不調が背景

嶋田 拓磨
经过
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クシュタールが買収計画を正式に断念

カナダの大手流通企業クシュタールは7月16日、セブン&アイ・ホールディングスへの買収提案を撤回したと発表した。提案は2024年7月に提示されたもので、買収額は約7兆円規模に達する見通しだった。クシュタール側は、セブンの取締役会に宛てた書簡で、「誠意ある協議が行われなかった」として、撤回の理由を明示した。

米国市場での統合案に独禁法が影響

両社は米国内に多数のコンビニ店舗を展開しており、合併によって市場での支配力が増すと見られていた。このため、米国の独占禁止法に抵触する可能性が指摘されており、両社は今年春、店舗の一部を売却することで合意していた。しかし、実際の売却先の選定などで進展は限定的だった。

セブン側は経営集中で買収回避を図る

セブンは、買収回避のため、主力のコンビニ事業への経営資源集中策を打ち出した。その一環として、総合小売のイトーヨーカ堂を含む非中核事業の切り離しを進め、企業価値の向上を目指している。また、創業家は対抗案として非上場化と自己買収の構想を提示したが、資金調達の見通しが立たず頓挫した。

国内外事業の課題が経営に重くのしかかる

セブンは7月17日、「自立的な企業価値の向上策を引き続き実行していく」と表明した。ただし、国内のコンビニ事業においては、営業利益が前年同時期より11%落ち込んでおり、業績は依然として低迷している。海外部門では回復傾向が見られるが、その背景には主に人件費の削減による効果があるとみられる。

新体制による経営戦略の転換に注目

セブンは来月、新経営陣の下で初の中期経営計画を発表予定であり、買収問題の決着後、経営再建に注力する構えだ。今後は、国内市場の再成長と海外事業の持続的な強化が課題となる。買収の白紙化が経営の再出発につながるかが注視されている。

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