欧州での新たな生産拠点が始動
トヨタ自動車は9月3日、チェコ中部コリーンにある生産拠点で電気自動車(EV)の製造に乗り出すと発表した。投資額は約6億8000万ユーロ、円換算でおよそ1200億円に達する規模で、欧州における自社工場でのEV生産は今回が初めてとなる。現地では式典が開催され、政府要人も参加し、産業界にとって大きな節目となった。
工場拡張と電池組立ラインを整備
今回の計画では、既存のチェコ工場を拡張し、バッテリー組立を含む新たな生産ラインを導入する。これにより従来の小型車「ヤリス」やハイブリッド車に加えて、次世代EVの現地製造が可能となる。欧州市場における電動車の需要増に対応する体制を構築し、供給の安定化を図る。
生産開始は数年以内と見通し
欧州法人の中田佳宏社長によれば、EVの生産開始は今後数年以内を目標としている。現段階では具体的な車種や生産規模は公表されていないが、現行の年約22万台の生産体制に上乗せする形で拡充される見込みだ。トヨタはこの取り組みを通じて、欧州市場における競争力をさらに高める方針を示している。
脱炭素社会に向けた欧州戦略
欧州でカーボンニュートラルを実現するため、トヨタはEV戦略を加速させている。2026年までに14モデルを投入し、翌2027年には新車販売台数の2割にあたる25万台をEVとする目標を掲げる。チェコ工場での新生産体制は、その達成を支える柱となる。
チェコ政府が歓迎する姿勢を表明
発表の場に立ち会ったチェコのフィアラ首相は、同国の自動車産業にとって画期的な一歩だと強調した。「生産拡大にとどまらず、技術レベルの向上を実現し、自動車産業を国内に維持するための重要な決断だ」と述べ、雇用や技術発展への波及効果に期待を示した。