店舗再編の中で異例の新規開設が判明
三菱UFJ銀行は、長年進めてきた有人店舗の削減方針を転換し、約20年ぶりに新規店舗を開くことを決めた。新たな店舗は「エムットスクエア」と名付けられ、9月12日からJR高輪ゲートウェイ駅直結の商業施設内で営業を開始する。資産運用の相談や金融イベントを提供し、従来の窓口業務にとどまらないサービスを展開するのが特徴だ。
「金利のある世界」で戦略が変化
かつて超低金利時代には個人資金が預金に滞留し、店舗コスト削減を優先する方針が主流だった。しかし、金利上昇を背景に預金獲得競争が再燃したことで、銀行はリアル拠点を通じた顧客接点の確保に動き出した。三菱UFJ銀行は「金利のある世界では預金量こそが強み」と位置づけ、個人向けビジネス強化を鮮明にしている。
利便性重視の営業体制を発表
エムットスクエアは、従来の支店にはなかった土日祝日の営業や、平日夜8時までの利用など柔軟な運営体制を整える。会社員や家族連れも立ち寄りやすいよう開放的な空間を重視し、資産承継や投資相談を対面で提供するほか、金融リテラシー向上を目的としたセミナーやイベントの開催も予定されている。
他行との競争環境が影響
三菱UFJ銀行の新戦略は単独の動きではない。三井住友銀行やみずほ銀行も新たな拠点を開設し、デジタルとリアルの両面で顧客基盤を強化している。金融業界全体で、単なる店舗縮小から、「選択と集中」による拠点再構築へと流れが移りつつある。
国内店舗網の将来的な変化
三菱UFJ銀行は現在323店舗を展開しているが、その4分の1から3分の1をエムットスクエアへ転換する計画を示している。10月には大阪府箕面市で2号店を開設予定であり、都市部を中心に新たな形態の店舗展開が広がる見通しだ。半沢淳一頭取は「銀行の存在は社会の変化とともに姿を変える」と述べ、新店舗を大きな節目と位置づけた。