キリン、歳暮ギフトを大幅縮小 アサヒ障害の余波広がる

市原 陽葵
经过
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予想超える需要、安定供給を優先

キリンビールは20日、歳暮向けギフト商品の販売を17種類から3種類に大幅に減らすと発表した。発端は、アサヒグループホールディングスで発生したサイバー攻撃によるシステム障害。出荷の遅れで市場にアサヒ製品が不足し、消費者の需要が他社に急速に流れた。
想定を超える注文が集中したため、キリンは「安定供給を最優先する」として、人気の「一番搾り生ビールセット」3種類に絞る判断を下した。その他の「晴れ風」や「ファミリーセット」は休売とする。

サイバー攻撃が引き起こした供給混乱

アサヒGHDでは9月29日にランサムウエア攻撃を受け、受注・出荷システムが一時停止。復旧は進んでいるものの、依然として物流の遅れが続いている。この影響が年末商戦のビール業界全体に波及し、各社が相次いで対応を迫られた。
昨年、アサヒは42種類の歳暮ギフトを販売していたが、今年は「スーパードライ」のみを詰め合わせた3種類に限定している。

サントリー・サッポロも販売縮小

サントリービールは「プレミアムモルツ」シリーズの干支デザインセットなど13種類のギフトを中止し、サッポロビールも「エビス」や「黒ラベル」10種類のギフトセットを休売した。業界全体でギフト商品の供給制限が進むことで、百貨店や量販店の歳暮商戦に影響が及ぶとみられる。
各社は共通して「定番商品の安定供給を優先する」としており、年末にかけての生産ラインは通常出荷を維持する方針だ。

百貨店・小売りに広がる影響

歳暮期は年間でもビール需要が高まる時期にあたる。今回の一連の休売により、贈答品コーナーを展開する百貨店や小売業では商品ラインアップの見直しを迫られている。特に各社が販売を停止した人気ブランド商品は品薄となり、販売計画の再構築が必要になる見通しだ。
一方で、一番搾りなどの定番商品は需要が集中する可能性が高く、供給体制の維持が課題となる。

サイバー攻撃が示すリスク拡大

今回の事態は、製造業や流通業が抱えるサイバーリスクの深刻化を浮き彫りにした。ビール業界という消費財分野でも、情報システムへの攻撃がサプライチェーン全体に影響を及ぼすことが明らかになった。
今後はセキュリティ対策の強化とともに、異常時でも生産・供給を維持できる体制の確立が求められる。

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