ホンダ、メキシコ工場停止 半導体供給難が北米事業に打撃

小野寺 佳乃
読了目安: 6 分

半導体紛争が自動車生産に波及

ホンダは10月29日、メキシコ・セラヤ工場の操業を停止したと明らかにした。原因は、中国系半導体企業ネクスペリアをめぐるオランダと中国の対立による供給混乱である。車載用半導体の入手が困難になり、北米向け生産ラインを維持できなくなった。日本の自動車メーカーとして、この国際摩擦による直接的影響が確認されたのは今回が初めてだ。

オランダの統制強化に中国が報復

事態の発端は、オランダ政府が9月末にネクスペリアを「企業統治上の重大な欠陥」を理由に管理下に置いたことだった。これに反発した中国政府は、ネクスペリアが中国で製造する半導体製品を輸出規制の対象とし、対抗措置を講じた。国際的な半導体供給網の一角が揺らいだことで、自動車産業への影響が表面化した形だ。

北米生産網への影響拡大

ホンダのセラヤ工場は年間約20万台の生産能力を持ち、主力車種「HR-V」などを組み立てている。現地時間28日に生産を停止したが、再開の時期は未定である。また、米国とカナダの工場でも27日から減産を開始しており、北米全体の供給能力が圧迫されている。北米市場はホンダにとって最大の収益源であり、長期化すれば業績に影響を及ぼす可能性が高い。

自動車業界に広がる供給不安

今回の混乱は、特定の国際関係に依存するサプライチェーンの脆弱さを改めて示した。半導体は電動化や自動運転の基幹部品であり、安定供給が困難になれば業界全体の成長戦略に支障を来す。欧州や米国では、政治的リスクを回避するための「サプライチェーン分散化」が急務となっている。

技術覇権争いが生産現場を直撃

半導体を巡る地政学的対立は、自動車業界にとっても避けられない構造問題となった。今回のホンダの事例は、米中対立に欧州が巻き込まれる新たな局面を象徴している。各国の政策判断が生産現場に即座に影響を及ぼす状況の中で、企業は調達先の多様化と技術リスクの管理が求められている。

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