オープンAI、アマゾンと5兆9千億円のクラウド契約

市原 陽葵
经过
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アマゾンのAWSを初採用、AI開発基盤を強化

米オープンAIは11月3日、米アマゾン・コム傘下のクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」と7年間で380億ドル(約5兆9千億円)に及ぶクラウド利用契約を締結したと発表した。これにより、同社は対話型AI「ChatGPT」や次世代生成AIの開発・運用環境を一段と強化する方針を示した。AWSのデータセンターに搭載されたエヌビディア製の高性能半導体を活用し、AI需要の急拡大に対応する。

マイクロソフト独占体制を見直し

オープンAIはこれまでマイクロソフトと資本・技術両面で強固な協力関係を築いてきたが、10月の組織再編で契約構造を変更し、他社とも自由に提携できる体制を整えた。今回の契約はその第一弾であり、AWSとの取引は同社にとって初めてとなる。クラウド供給先を多様化することで、AIモデル開発のリスク分散を図る狙いがある。

世界3大クラウド事業者すべてと提携

今回の契約により、オープンAIはマイクロソフト、グーグル、アマゾンというクラウド市場の3大事業者すべてからリソース供給を受けることになる。AWSは2026年末までに数十万個のAI半導体を搭載したサーバー群を整備する計画で、これを基盤としてオープンAIのインフラを段階的に拡張していく見通しだ。発表直後の3日、アマゾン株は前週末比で約4%上昇した。

AI開発競争の激化でインフラ投資が拡大

オープンAIはこれまでにもオラクルに約3,000億ドル、マイクロソフトに2,500億ドル規模のクラウド契約を締結しており、今回のAWS契約はその延長線上にある。同社はソフトバンクグループを通じてデータセンター供給を受けるほか、自社施設の開発も進めている。2025年10月末時点で、契約済みのAIインフラへの将来支払い総額は1兆4,000億ドルに達していた。

資金繰りと収益性への懸念も

一方で、膨大な設備投資が収益性を圧迫する懸念も出ている。サム・アルトマンCEOは「年間売上高は報道よりも大幅に多い」と強調したが、支出規模は依然として資金調達額を上回っている。AI競争が激化するなか、オープンAIが持続可能な成長を維持できるかが今後の焦点となる。

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