​​日本製鉄、600億円赤字へ下方修正 USスチール低迷響く

小野寺 佳乃
読了目安: 7 分

米市況の悪化でUSスチールの収益寄与が消失

日本製鉄は5日、2026年3月期の連結最終損益見通しを600億円の赤字に下方修正した。従来は400億円の赤字を予想していたが、USスチールの利益寄与を見込まないことが主因となった。6月に完全子会社化した同社では、米国の鉄鋼価格下落に加え、コークス炉火災などの設備トラブルが発生し、想定を上回るコスト負担が生じた。

事業利益も引き下げ、米市場の不透明感強まる

連結事業利益の予想は4800億円から4500億円へ修正された。マージン改善は見られたものの、USスチール関連の損失が利益を圧迫した。米関税の影響は当初500億円と見込んでいたが、現在は200億円規模に縮小する見通し。それでも米国市場の需要鈍化や在庫圧力が続き、収益環境の改善には時間を要するとみられている。

USスチールが中長期計画を発表、高付加価値製品を拡充

USスチールは4日、総額140億ドル(約2兆1500億円)の中長期投資計画を公表した。うち110億ドル(約1兆7000億円)を2028年までに投じ、高級鋼材の生産体制を強化する。日本製鉄の技術を活用し、米国内での付加価値製品開発を加速させる方針だ。米政府が同社に保有する「黄金株」についても、森高弘副会長は「事業の障害にはなっていない」と説明した。

設備投資で収益体質の改善を目指す方針

森副会長は会見で「USスチールの収益体質は脆弱だが、投資の実行が有効な改善策になる」と述べた。今期は一過性のコスト増が重荷となるものの、来期以降は投資効果の発現と米市場回復により、黒字転換が期待できるとの見通しを示した。また、日本製鉄全体としても、年内に新たな中長期経営計画を策定・公表する予定だ。

鋼材価格の下落も収益を圧迫

単独の粗鋼生産量計画は3450万トンで据え置かれたが、鋼材価格は1トン当たり13万8000円と前期実績(14万2100円)からの下落を見込む。原材料コストの上昇と米国での需要低迷が重なり、事業環境は依然として厳しい状況にある。経営陣は投資と構造改革を両輪に、来期以降の再建を目指す姿勢を示した。

この記事をシェア