欧州最大級のデータセンター建設が始動
米大手IT企業グーグルは、2026〜2029年の4年間でドイツ国内に55億ユーロ(約1兆円)を投資する計画を公表した。主な目的は、クラウド基盤および生成AI向けインフラの整備である。新たなデータセンターをフランクフルト近郊ディーツェンバッハに建設し、ヘッセン州ハーナウの既存施設も拡張する。これにより欧州でのデータ処理能力を高め、企業のAI導入を支援する体制を整える。
メルセデス・ベンツなど産業界との連携を強化
今回の投資の背景には、ドイツ製造業が直面するAI活用の競争力強化がある。メルセデス・ベンツをはじめとする主要企業がグーグルのクラウドやAIサービスを導入することで、設計、生産、物流など多様な工程の最適化を図る見通しだ。グーグルはこれを「欧州産業のデジタルトランスフォーメーションを後押しする取り組み」と位置づけている。
脱炭素化を柱に持続的成長を目指す
新設される施設では、再生可能エネルギーの利用を拡大し、蓄電機能を併用することで2026年までに脱炭素比率を約85%に引き上げる計画だ。グーグルは以前からカーボンニュートラルを掲げており、今回のプロジェクトも環境配慮型のインフラ整備として注目される。
雇用創出と経済効果の波及
グーグルは、この投資によって約9,000人の雇用が新たに生まれると試算している。うち各拠点で約100人の直接雇用が見込まれ、間接的な経済波及効果も大きい。年間約10億ユーロの国内総生産(GDP)押し上げ効果が期待されており、地域経済の活性化に寄与することになる。
政府補助なしの民間主導投資が注目
クリングバイル財務相は11日の記者会見で、「今回の投資はドイツが欧州のビジネス拠点としての地位を高める重要なシグナル」と述べた。一方で、政府から補助金や税制優遇は行わない方針を明らかにした。民間資金による大規模投資として、今後の欧州IT産業への波及が注目される。