広島のカキ大量死深刻化で政府が緊急対策を発表

市原 陽葵
经过
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養殖現場の被害実態が判明し生産地で深刻な影響広がる

広島県の主要産業である養殖カキで大量死が相次ぎ、生産地の東広島市や呉市では壊滅的な被害が確認されている。各地域の報告では生育中のカキの大半が死滅しており、全国生産量の約6割を占める広島県産への影響は極めて大きい。水揚げが始まった10月以降、漁業者から「8~9割が死んでいる」との報告が続き、県は災害級と位置づけて対応を進めている。地域の関係者は生産体制の崩壊を懸念し、流通や取引にも影響が広がりつつある。

農水相が現地で状況を確認し原因調査の徹底を発表

19日、鈴木憲和農林水産相が東広島市のカキ養殖現場を視察し、水揚げ直後のカキの状況を自ら確認した。視察では、地元の水産会社から生育段階で起きた異常や被害の拡大状況について説明を受け、関係者との意見交換も行われた。鈴木氏は被害の深刻さを踏まえ、「原因の特定に向けて調査を進め、生産者の経営を維持するための体制を整える」と述べた。政府は既存制度を活用した支援策を早期に示す方針で、現場の不安解消に向けた対応が急務となっている。

高水温や塩分濃度上昇など複数要因の影響が指摘される

一連の大量死について、農林水産省や広島県は高水温や塩分濃度の上昇、海水中の酸素不足など複数の要因が重なった可能性を挙げている。しかし、特定の原因は現時点で判明しておらず、科学的な調査を進める必要があるとしている。周辺地域でも被害が広がり、広島県のみならず兵庫県や岡山県の一部でも同様の死亡例が確認された。例年とは異なる環境変化が生育に影響を与えたとみられ、被害の範囲と発生経緯を把握する作業が続いている。

地域産業に及ぶ経済的影響が判明し流通にも不安高まる

広島県のカキ生産量は年間約8万9千トンに達し、地元経済における重要性は高い。今回の大量死により、生産者からは「予約の受付ができない」との声が上がり、特に年末の贈答品需要を見込んでいた業者への影響が顕在化している。また、飲食店からは仕入れ量の確保や価格の変動を心配する声が寄せられ、供給不足による市場混乱が懸念されている。県内の店舗では現時点で通常通り仕入れができている例もあるが、今後の供給状況に関しては多くが警戒感を示している。

支援策の調整が進み被害地域で期待と課題が交錯する

視察後、鈴木農水相は「早期に支援策を提示したい」と述べ、被害を受けた養殖業者の経営を維持するための支援を進める考えを示した。現場では事業継続への不安が強まり、特にほぼ全滅状態となった地域では将来的な再建の見通しを立てられない状況が続く。国と自治体が連携し、原因の解明とともに経営支援の具体策を講じることが求められている。被害の全容が明らかになるにつれ、地域経済に及ぶ影響の大きさが浮き彫りになっている。

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