米ズークス向け電池調達で供給網多角化が進展

浅川 涼花
经过
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自動運転向け電池供給契約の成立が明らかに

パナソニックエナジーが米ズークスへの電池供給に踏み切ることが判明した。ズークスはアマゾン傘下で自動運転タクシーの開発を手がけており、今回の契約により2026年から円筒型リチウムイオン電池の提供が始まる予定だ。自動運転を前提とした車両の普及に向けて、電池の安定供給は欠かせない。パナソニック側はEV領域で培ってきた製造技術を活用し、新たな成長分野での展開を強める考えを示した。

2170型セルの採用拡大が市場動向を示す

提供される電池は2170型セルで、同社がEV用として量産してきた主要製品にあたる。充電速度や耐久性のバランスに優れており、タクシーのように連続稼働が求められる用途に適している。初期ロットは日本国内の工場で製造される計画で、品質管理体制を維持しながら供給をスタートさせる構えだ。ズークス側は稼働地域の拡大を進めており、供給計画はその動きと連動する形となる。需要が増す中、電池の供給確保は事業基盤を支える要素として位置付けられている。

北米拠点移行による生産体制強化が進行

供給開始後、電池の生産は米カンザス州の工場に移される見通しだ。北米市場での需要拡大に対応し、生産から納入までのリードタイム短縮を図るための措置とみられる。同工場はパナソニックの北米戦略における重要拠点であり、今回の契約を通じて稼働率が高まり、供給能力の強化につながる。テスラ向けの製造で蓄積したノウハウがそのまま活かされる形となり、地域に根ざした供給網の構築が加速する。

ズークスの事業拡大と車両仕様が供給条件に影響

ズークスは2025年に初の量産工場を設置し、同年9月にはラスベガスで自動運転タクシーの配車を開始した。車両には従来の操作装置がなく、完全自動運転を前提とした設計になっていることが特徴だ。量産体制の本格化に伴い、車両台数の増加が見込まれ、電池の必要量も増えている。稼働地域の拡大と利用者増加が続けば、安定供給は一層重要性を増す。パナソニックエナジーの提供が事業運営に直結する形となる。

取引先多様化で依存度低下の動きが鮮明に

パナソニックエナジーは長年テスラへの供給が主体であったが、事業拡大に向けて他社向けの出荷を増やしている。近年は北米新興企業や欧州のトラックメーカーにも供給を開始しており、顧客基盤の分散が進む。ズークスとの契約はその流れを象徴するもので、同社の戦略が自動運転分野にも広がった形となる。今後は複数の顧客を対象とした柔軟な生産体制が求められ、北米工場の役割がさらに重要性を増すとみられる。

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