災害時の通信確保策が示される動き
大規模災害で通信網の途絶が生じた際、契約会社とは別の回線を利用して通話を可能にする仕組みが、2026年3月にも導入される見通しとなった。携帯大手を対象とした取材で判明したもので、緊急時に通話そのものが成立しなくなる状況を避けるための制度整備が進む。携帯電話による110番や119番の発信割合が高い現状を踏まえ、回線障害に直面した場合の代替策を確保する意図が示されている。これまで他社回線への切り替え機能は制度化されておらず、災害時の連絡不能が繰り返されてきた。
新制度の具体的内容が示された動き
総務省は11月27日の有識者会議で制度の枠組みを確定する予定で、新名称として「JAPANローミング」が示される見通しだ。制度はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が中心となって運用準備を進める方針とされ、導入前には実証的な試験が行われる。制度の認知を広げるための周知措置も想定され、利用者が仕組みを理解したうえで活用できる体制が整えられる。導入に向けた議論は既に複数の場で進められており、非常時の通信確保策として重点的に扱われている。
相互利用の開始条件が示される見通し
回線を相互に利用する措置は、台風や地震などの広域災害に加え、停電が長期間続く恐れがある場合にも実施対象となる。障害発生地域の状況を踏まえ、契約会社が独自回線を提供できない場合に限って他社回線の利用を認める方向で整理されている。回線全体が一斉に停止する事態を避けるため、相互開放に踏み切る基準は慎重に定められている。行政側と企業側が状況を共有し、実施の可否を協議して判断する体制が求められる。
緊急通報に限定した方式が採用される方針
制度は2つの方式を備えるとされ、1つは110番や119番など緊急通報のみを他社回線で扱う形、もう1つは通話やデータ通信を含む広範なサービスを利用可能とする形である。どちらを適用するかは、被害規模や通信障害の程度に応じて携帯各社が判断するとされる。優先度の高い通報機能の確保を最優先としつつ、地域の回線状況を考慮した柔軟な運用が想定されている。制度の段階的運用により利用者の混乱を抑えつつ、非常時の通信維持を図る仕組みが整えられる。
対応範囲の拡大に向けた取り組みが進行
相互開放の対象には大手4社以外の事業者も含まれる方向性が示されており、契約種別や料金プランに左右されずに利用できる仕組みが検討されている。回線数の多様化が進む中で、特定の事業者だけが除外されることなく、広く利用者の安全確保につながる制度となることが求められる。制度導入後は各社が運用状況を検証し、より実効性の高い仕組みへ改善を進めることが期待される。