高精度測位網が完成段階に みちびき7号機打上げ決定

市原 陽葵
经过
読了目安: 9 分

7号機投入で測位システム刷新が判明

準天頂衛星「みちびき」7号機が報道陣に公開され、2026年2月1日にH3ロケット9号機で軌道へ送り出される計画が示された。鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターが打ち上げ場所となり、午後4時30分から午後6時の時間帯が設定された。今回の投入は、日本版測位網の整備に向けた最終段階とされ、複数の衛星が連続的に日本上空をカバーする運用体制の完成に直結する。予備期間は3月末まで確保され、運用リスクの低減が図られている。

日本単独での測位実現を支える体制が進展

みちびきはアジア・オセアニア向けの衛星測位システムで、2010年の初号機投入以降、段階的に構成を拡大してきた。2018年には4基体制を確立し、高精度測位が実現した。現在5基が運用されており、12月7日には5号機がH3ロケット8号機で投入される予定だ。7号機が加わることで、日本上空に存在するみちびきのみで常時4基以上の信号を受信できる体制が整う。これにより、他国の衛星網に依存せずに測位が完結する運用環境が確立され、測位サービスの安定性が向上する。

誤差の縮小が各産業の高度化に影響

みちびきの信号はGPSと併用することで誤差が数センチまで抑えられ、従来の約10メートルの誤差と比較して飛躍的に精度が向上する。衛星信号はスマートフォンで受信可能で、農機の自動運転、物流効率化、災害対応、インフラ点検など幅広い分野で利用が進むとみられている。特に農業分野では位置情報の精度が作業効率に直結するため、高精度測位の恩恵は大きい。災害発生時には被災地域の把握や復旧作業の手順策定にも役立ち、現場対応の迅速化につながる。

地域展開と安全保障の重要性が拡大

広域利用が可能な特性から、みちびきの信号はアジア・オセアニア地域での活用が視野に入れられている。国際展開が進めば、物流やインフラ管理などを対象にしたサービスが地域全体へと広がる可能性がある。また、近年は衛星信号を模倣して地上機器を操作する電波妨害などの脅威が増加しており、みちびきの安定した信号は安全保障の面でも重要視されている。信頼性の高い測位が確保されることで、各国との協力体制にも影響を与えるとみられている。

次世代衛星網構築に向けた動きが加速

政府は衛星の予備体制強化を目的に、11基規模での運用網を将来構想として掲げる。故障時に代替衛星を即時投入できる体制を整えることで、測位サービスの継続性を高める狙いがある。三菱電機は薄型化された新型衛星の開発を進め、1機のロケットで2基を同時に運ぶ設計を導入して打ち上げ費用の抑制を図っている。2032年度の実用化を目指し、長期的な宇宙開発投資が本格化しつつある。官民が連携して衛星網構築に取り組むことで、国内外の測位需要に対応できる基盤が形成されつつある。

この記事をシェア