海外展開を広げる方針示す
コクヨは12月4日、ベトナムの文具メーカーであるティエン・ロン・グループ(TLG)を買収する計画を明らかにした。総額は約276億円で、同社にとって過去最大規模の投資となる。計画では2026年10月以降に株式公開買い付けなどを実施し、TLG株の最大約65%を確保する。TLGは筆記具製造でベトナム有数の事業者として知られ、2024年12月期の売上高は224億円とされる。
TLGの販売能力に注目集まる
今回の買収により、コクヨは東南アジア市場における事業基盤を拡大する狙いを持つ。TLGは同地域で強い販売ネットワークを構築しており、その供給力は年間10億本を超える筆記具の生産が可能とされる。既存のインドや中国での展開に加え、成長余地の大きい市場との連携が進むことで、筆記具分野の競争力が高まる見通しとなっている。
国内市場縮小を背景にした判断
日本国内では、少子化や教育環境のデジタル化の影響で文具需要が伸び悩んでいる。コクヨの文具事業の2024年12月期売上高は835億円だったが、国内市場の縮小傾向は継続している。そのため、海外売上比率を高めることが課題となっており、今回の買収は収益構造の強化に直結するとみられる。
海外比率拡大の具体的な目標
同社は2030年までに海外売上比率を現在の約15%から25%以上に引き上げる計画を掲げている。さらに中期的には、アジアにとどまらず欧米や中東などへの展開も視野に入れている。TLGの買収はその第一歩と位置づけられ、海外での事業拡大を加速させる役割を担う。
第4の事業拠点としての期待
コクヨは今回の買収で、東南アジアを日本、中国、インドに次ぐ第4の柱として育てる方針だ。TLGの販売力と生産能力を取り込み、ノートや筆記具の供給体制を強化することで事業の多角化を進める考えが示された。市場環境の変化が続く中、地域分散を通じた安定した収益確保が求められている。