景気と物価動向を踏まえた慎重な判断が示される
欧州中央銀行(ECB)は9月11日の理事会で、中銀預金金利を2.0%に維持した。7月に続き2会合連続の据え置きであり、利下げサイクルが終了したとの見方が市場で広がった。ユーロ圏のインフレ率は2%前後に収まり、経済成長も安定を示していることが背景にある。
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インフレ見通し修正と経済予測の変化が発表
ECBは最新の経済見通しを公表し、2026年のインフレ率予測を1.7%に引き上げ、2027年を1.9%に引き下げた。一方で、2025年の成長率を1.2%に上方修正し、2026年は1.0%に引き下げた。物価高のピークは過ぎたとみられ、ディスインフレ進行は終了したとの認識が示された。
ラガルド総裁、貿易環境の不透明感に懸念を表明
記者会見でラガルド総裁は「基調的なインフレはECBの中期目標と一致している」と述べた。その一方で「トランプ米政権の関税政策や地政学的緊張が続けば、輸出の減速を通じて投資や消費に下押し圧力が及ぶ可能性がある」と発言し、経済の先行きに対する慎重な姿勢を示した。
金融市場では追加利下げ観測が後退したことが判明
市場ではECBの姿勢を受け、金利先物の動きから追加利下げの見込みが大幅に後退した。結果としてドイツ10年国債利回りは2.69%に上昇し、ユーロも対ドルで1.1739ドルまで上昇した。投資家心理には安定感が広がる一方で、今後の国際情勢に左右される可能性もある。
過去の利下げ局面を経て現在の安定局面に移行
ECBは昨年から今年にかけて8回の利下げを実施し、政策金利は4%のピークから中立的とされる水準まで下げられた。これにより物価の急騰は抑制され、ユーロ圏経済も持ち直しを見せている。ただし、当局は「不確実性が残る限り、会合ごとに慎重な判断を行う」との姿勢を崩していない。