ソニーFG株が初値205円、資本市場に新たな試金石

河本 尚真
经过
読了目安: 6 分

東証プライムにおける直接上場が始動

ソニーフィナンシャルグループ(ソニーFG)は9月29日、東京証券取引所プライム市場に株式を上場した。新株発行や公募を伴わない直接上場方式が採用され、終値は173円80銭で基準参考値を約16%上回る結果となった。初値は205円を付け、時価総額は1.46兆円に達したことから、市場の強い関心を集めた。

制度初活用のパーシャル・スピンオフが注目

今回の上場は、企業再編を後押しするために設けられた「パーシャル・スピンオフ」制度の国内第1号事例となった。ソニーGは2割未満の株式を保持し、8割超を株主に割り当てることで、実質的に非課税での子会社分離を実現した。この仕組みにより、親会社と子会社双方が独自の成長戦略を市場に示すことが可能となった。

投資家心理を揺さぶる値動きが展開

市場関係者は「ソニーFG株が基準値150円を超えるか否かが焦点」と指摘しており、初値の形成過程は強い注目を浴びた。幹事証券会社が提出した参考値をもとに決まる最初の板中心値段は、従来のIPO公開価格とは性格が異なるとされ、市場では価格の妥当性をめぐる議論が続いている。

中期経営計画における成長戦略を提示

ソニーFGは、2026年度までに修正純利益を1250億円へ拡大させる中期計画を策定。生命保険事業を収益の柱としつつ、2030年度には1700億円超を目指すとしている。ただし、ネット銀行事業の勢いが一時期に比べ鈍化している点が市場では課題として指摘されている。

株主価値向上への試み

上場と同時に、総額1000億円の自社株買い枠を設定したことも市場の注目を集めた。日経平均からの除外に伴う需給悪化を見据えた措置とみられ、株価下支え効果が期待されている。グループとしては、非金融事業と金融事業を切り離すことで、資本市場への説明力を高め、株主価値の強化を図る方針だ。

この記事をシェア