日本銀行調査で示された製造業の回復傾向
9月の日銀短観では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数がプラス14となり、6月の調査から1ポイント上昇した。不透明感を和らげた日米関税合意が企業心理の改善に寄与したとみられる。造船や自動車など加工分野での持ち直しが確認された一方、鉄鋼や石油製品など素材産業は依然として厳しい状況が残った。
非製造業分野での業況判断とその動き
大企業非製造業の指数はプラス34で前回から変わらず、堅調さを維持した。建設やエネルギー関連で改善が見られる半面、宿泊や飲食などのサービス分野では逆風が強まっている。先行きについては指数がプラス28に低下する見通しが示されており、足元の安定感と今後の不確実性が交錯する形となった。
設備投資とインフレ期待の動向が判明
25年度の大企業全産業における設備投資計画は、前年比12.5%増と力強さを示した。市場予想を上回る上方修正は、企業の事業活動が依然として積極的に展開されていることを示唆している。また、物価見通しでは1年後から5年後までのCPI上昇率が2.4%と安定し、長期的なインフレ期待の根強さが確認された。
金融市場で強まる利上げ観測の影響
短観の内容を受け、金融市場では10月末の日銀会合で利上げが実施される確率が67%程度との見方が広がっている。為替市場では円相場が1ドル=148円台まで下落した後、ドル買いが再び進行する場面も見られた。背景には企業活動の底堅さが示され、日銀の政策修正への思惑が強まったことがある。
景気の持続性と政策判断の分岐点
今回の調査は、関税合意による安心感と、消費やコスト増への懸念が並存する現状を映し出した。日銀内でも利上げを主張する声が強まり、政策判断の転換点に近づきつつあることがうかがえる。景況感の改善が続く一方で、先行きの弱含みが示されたことは、今後の経済運営に大きな課題を投げかけている。