米国関税政策を巡る不透明感後退が影響
日本銀行の内田真一副総裁は2日、東京都内で開かれた全国証券大会で演説し、9月短観で示された企業景況感を「良好な水準」と評価した。背景として、米国の関税政策を巡る合意が成立し、将来への不安が後退したことを挙げた。製造業では一部に改善が見られたが、輸出採算の悪化が残ると分析した。
企業収益は高水準を維持していると報告
短観の結果を踏まえ、内田氏は「企業収益は全体として高水準を保っている」と述べた。日米貿易環境の安定化が一定の追い風となり、国内企業の事業活動を下支えしているとの評価を示した。
物価動向は一時的な停滞も想定
物価の基調については、成長ペースの鈍化などにより「当面は伸び悩む」との見通しを示した。ただし、日銀の展望リポートで示された通り、期間後半には2%前後で推移する可能性が高いと述べた。これにより日銀の物価安定目標に合致すると説明した。
利上げに関する市場の見方を注視
内田氏の発言を受けて、市場では10月の金融政策決定会合での利上げ観測が強まっている。特に、9月会合で複数の委員が利上げを提案したことから、日銀内部の議論が広がっている。市場の予測では一時70%近い利上げ確率が示され、現在も60%以上で推移している。
不確実性の中で政策判断に慎重姿勢
一方で内田氏は、内外経済や金融市場の動向を「丁寧に確認し、予断を持たずに判断する」と述べ、不確実性の高さを強調した。国内では自民党総裁選が行われるなど政治情勢も流動的であり、金融政策の選択肢を広く残しておく必要性を示唆した。