政府が予算編成議論を開始 責任ある財政運営を強調
財務省は11月5日、財政制度等審議会(財政審)を開き、高市早苗政権下で初めてとなる2026年度予算の編成に向けた議論を始めた。前政権の予算要求が過去最大の122兆円超に膨らんだ中、現政権は「責任ある積極財政」を掲げ、財政出動と健全化の両立を重視する姿勢を打ち出した。高市首相は「戦略的な財政出動によって強い経済を実現する」と強調している。
成長と安定の両立を目指す新たな政策路線
政府は前日、日本成長戦略本部を立ち上げ、AIや半導体、造船、量子技術など17分野を重点投資対象とする方針を示した。高市政権は「新資本主義」からの転換を掲げ、官民連携で経済基盤を強化し、税収拡大を通じて財政の持続性を確保する方針だ。こうした成長重視の戦略が、次年度予算編成の柱になる見通しである。
金利上昇が利払い費に与える影響を試算
会合では、長期金利上昇に伴う国債利払い費の増加が大きな懸念として議論された。財務省による試算では、金利が想定より1%上昇した場合、利払い費は現在の10.5兆円から2034年度には34.4兆円に膨らむ見通しが示された。この増加は財政運営の柔軟性を制約し、将来の政策対応力を弱める可能性がある。
委員が市場の信認維持と財政余力を強調
出席した委員からは、「市場の信認を失えば成長は持続しない」「想定外の事態に備えた財政余力の確保が不可欠」などの意見が相次いだ。増田寛也会長代理(野村総合研究所顧問)は会見で、「経済成長と財政健全化は両立すべき課題であり、今こそ的確な財政運営が求められる」と述べた。
社会保障費の見直し議論も進む
今回の会合では、医療・介護分野の支出抑制も取り上げられた。特に診療報酬の適正化を通じて、診療所と大規模病院の収益格差を是正する方向が検討された。財政審は今後も議論を重ね、12月下旬に予定される2026年度予算案の閣議決定に反映させる方針だ。