21兆円規模の新経済対策で家計支援と成長投資を強化へ

浅川 涼花
经过
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追加支援策の全体像が示す政策の方向性

政府は2025年11月21日、総額21.3兆円に達する経済対策を正式に決定した。物価高が続く中、家計への補助を軸に据えた内容となり、負担増に直面する世帯や企業を支える仕組みが整えられた。今回の対策には減税措置も含まれており、規模は新型コロナ禍後で最も大きい水準だとされている。政府は年内の補正予算成立を見据え、速やかな実施に向けて調整を進めている。

子育て支援と公共料金負担緩和の影響

今回の施策で最も大きな比重を占めるのが、国内在住の0歳から高校生相当の年代までを対象に、子ども1人につき2万円を支給する制度である。既存の児童手当の仕組みを利用することで、支給手続きの簡略化が図られた。さらに、一般家庭の負担軽減策として来年1〜3月の電気・ガス料金を合計約7千円引き下げる措置が含まれ、冬季に集中するエネルギー費の上昇への対策として位置付けられている。

食料品の高騰に対応するため、自治体に対し、おこめ券や電子クーポンの発行を促す形で支援が拡充された。重点支援地方交付金として2兆円が確保され、地域の状況に応じた事業の展開が期待されている。

成長領域への投資拡大が発表

物価対策以外にも、成長を支える分野への投資強化が打ち出された。半導体、造船といった戦略的産業への支援策が明記され、国内製造基盤の強化が意図されている。これらの産業は国際競争の激しさが増す中で、長期的な競争力を維持するための重点項目として扱われた。

また、防衛力向上に向けた支出として約1.7兆円が計上され、国内総生産比2%水準の確保に向けて取り組む姿勢が強調された。防衛分野の整備は国際情勢の不安定さを踏まえた措置であり、経済対策全体の重要な構成要素の一つとなっている。

財源確保と補正予算案の審議が進展

今回の経済対策を裏付ける補正予算案では、一般会計の歳出が17.7兆円とされ、前年度の13.9兆円を大きく上回る規模となった。特別会計では9千億円が見込まれ、政府の財政支出は広範囲に及ぶ。

財源については、国債の追加発行と税収増が組み合わされる見通しである。高市首相は対策決定後の記者団への説明で、当初予算と補正予算を合わせた国債発行額が前年度より少なくなるとの認識を示し、財政運営の持続性に配慮する姿勢を明らかにした。予備費については7千億円が追加され、突発的な事態への備えが強化される。

また、ガソリン税の旧暫定税率の廃止や所得税の課税最低ラインの引き上げによる減税効果は、合わせて2.7兆円程度になるとされている。これらの措置は、家計の可処分所得の向上を図る施策として対策全体に組み込まれている。

地方と企業への影響が広がる見通し

今回の対策により、地方自治体には重点支援地方交付金を原資とした施策の幅が広がる。地域の実情に応じた支援が可能となることで、物価高による影響が強い分野や世帯に焦点を当てた政策展開が期待される。また、赤字が続く中小企業の賃上げを後押しするための仕組みも設けられ、労働環境の改善に向けた支援が強化される。

一方で、対策の実行には自治体側の準備が不可欠であり、支援策の着実な運用が求められる。各施策の効果がどのように現れるかは、国会での予算審議や各地域での導入状況に左右される部分が大きい。今回決定された対策は、物価高への初動対応と成長領域の強化を同時に図る形となり、今後の政策運営に影響を与える重要な節目となる。

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