国債の評価額下落が示した動き
日銀が2025年9月末の中間決算をまとめ、保有国債の含み損が32兆8258億円に達したことが明らかになった。前年3月末の28兆6246億円から増え、比較可能な期間で最大となった。長期金利の上昇を背景に市場価格が調整し、簿価との差が広がった形である。保有規模の大きさに比例して評価損も拡大し、金融政策転換期の特徴が数字に表れた。
金融政策の変更に伴う動きが浮上
日銀は金融緩和の見直しを進め、国債買い入れのペースを抑制する措置を続けてきた。政策金利の**0.5%**への引き上げもあり、金利環境は上向きへ変化した。金利上昇局面では債券価格が下落し、保有国債の評価額は一段と縮小した。金融正常化の進展が国債市場だけでなく、日銀自身の資産評価に反映された。
利払い負担の変化が示された状況
日銀は当座預金に対する利払いが1兆2683億円まで増え、保有国債から得る1兆1820億円の利息を上回った。結果として逆ざやが発生し、これは2008年10月以降で初めての状況となった。政策金利の引き上げがコストの増加につながり、その影響が日銀の収支に明確に表れた。
会計処理が示す位置づけが焦点に
日銀は国債の満期保有を前提とする会計手法を用いており、含み損は決算に直接反映されない仕組みになっている。このため、評価額が市場で下落しても実際の損失として処理されるわけではないと説明している。短期的な価格変動に影響されず、金融政策の運営に支障は生じないとする立場が示された。
市場からの視線が強まる背景
それでも、含み損の拡大が進む状況は日銀の財務状況への注目を一段と高めている。保有資産が大きく変動する局面では、中央銀行への信頼に関わる要素として市場が慎重に判断する必要がある。日銀は「政策運営に影響しない」と強調しているが、評価損が過去最大の水準に達した事実は引き続き焦点となっている。