金融政策の転換点が判明
ニュージーランド準備銀行は2025年11月26日に実施した会合で、政策金利を2.25%に引き下げる判断を示した。引き下げは0.25%で、2022年半ば以来の水準となる。今回で8月から3回続けての利下げとなったが、声明では国内経済の改善が進んでいると指摘し、これまで続いてきた緩和局面が終盤に差し掛かっている可能性に言及した。
市場では利下げ自体は広く予想されており、ロイターによるエコノミスト調査でも大多数が今回の措置を見込んでいた。一方で、中銀が追加緩和を示唆しなかったことで、市場参加者の間では政策方向の変化が意識される展開となった。
経済環境の見直しを発表
声明では、国内の経済活動は2025年半ばにかけて弱い状態にあったが、その後は持ち直しに向かっているとの認識が示された。低金利により家計支出が下支えされ、労働市場も安定を取り戻しつつある。こうした要素が総需要の改善につながり、景況感が回復に向かっていると評価された。
また、中銀はインフレ見通しについて、リスクが全体として均衡していると述べた。これにより、急激なインフレ圧力が高まる懸念は後退したとされる。ただし、声明ではインフレと生産の上振れリスクにも引き続き注意を払う必要があるとし、データ動向を慎重に見極める姿勢が示されている。
金利見通しと内部議論が判明
議事要旨によれば、政策委員会は据え置きと利下げの2案を検討した。最終的に6人中5人が利下げを支持し、緩和策の継続を選択したことが明らかとなった。これにより、中銀内部においても景気支援の必要性が広く共有されていることが裏付けられた。
一方で、中銀が公表した予測では、OCRは2026年第1四半期に2.20%、2027年第4四半期では2.65%が見込まれ、将来的には金利が緩やかに上昇していく方向性が示された。8月時点の予測より低い水準だが、長期的な正常化に向けた流れが維持されている。
市場の反応と金融環境の影響
今回の発表を受け、NZドルは対米ドルで上昇し、1週間以上ぶりの高値を付けた。2年物スワップ金利も上昇し、市場が織り込む追加利下げの可能性は前日から大幅に縮小した。中銀の姿勢が緩和から据え置き方向へ移行しつつあるとの見方が強まり、投資家の金利観に変化が生じている。
ただし、金融緩和の効果が十分に広がっているとは言い切れない状況もある。住宅市場では利上げ後の低迷が続き、世界経済の減速や失業率の上昇が景気の足を引っ張っている。政府の緊縮財政も、民間需要の回復を抑制する要因となっている。
成長見通しと政策判断の影響
中銀は第3四半期の成長率を0.4%、第4四半期を0.7%と見積もり、経済活動が緩やかに持ち直すとの見方を示した。一方で、さらなる緩和措置に進むには、景気指標が予想を大幅に下回る事態が必要だとの指摘が専門家から出ている。今後の政策運営では、実体経済の変動を慎重に確認しながら、緩和から据え置きへの流れが定着するかどうかが焦点となる。
今回の利下げは、これまで続いてきた緩和の流れに一定の終わりをもたらす可能性があり、政策は新たな段階へ移りつつあるといえる。景気回復がどの程度維持されるかは、今後の金利判断にとって欠かせない基準となる。