日銀総裁発言を受け長期金利が急上昇した状況が明確に

小野寺 佳乃
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市場で長期金利が急伸した状況

12月1日の国内債券市場では、新発10年債利回りが 1.855% をつけ、2008年6月以来の水準となった。取引開始直後から売りが優勢となり、長期金利が着実に押し上げられた。市場では米国金利の上昇が早い時間帯から影響しており、国内債券の売りを誘発した。中期債など幅広い年限の国債で利回りが上昇し、朝方から金利の上昇が目立つ展開となった。

追加利上げ観測が市場で強まった影響

名古屋で開かれた懇談会に出席した 植田和男総裁 は、12月の決定会合で政策金利の取り扱いを適切に判断する姿勢を示した。この発言により市場では追加利上げへの観測が強まり、国債の売却につながった。賃金動向について情報収集を続けている点が改めて示され、市場関係者は政策修正への準備が進んでいるとの受け止めを広げた。具体的な会合日付に言及したことも影響し、市場心理を引き締めた。

先物相場が軟調に推移した背景

国債先物は夜間取引から弱含んでおり、その流れを引き継いだ形で朝の取引が始まった。中心限月12月限は寄り付き直後から売りが続き、前営業日比で下落幅を拡大した。米国債の利回りがアジア時間に上昇していたことが国内先物に影響し、相場の重しとして作用した。先物の下落は現物債の売りと連動し、金利が押し上げられる結果となった。

幅広い年限で利回りが上昇した動き

新発10年債以外でも、2年債や5年債で17年ぶりの水準が確認された。2年債の利回りは 1.015%、5年債は 1.366% まで上昇し、金利上昇の動きが広い範囲に及んだ。20年債や30年債などの長期ゾーンでも利回りが上昇し、債券市場全体で売りが強まった。週内に予定される国債入札を控えた調整売りも見られ、金利の上昇圧力となった。

経済指標の影響が小さい状況

7〜9月期の企業統計では設備投資が3四半期連続で増加したが、債券市場では大きな反応が見られなかった。市場の関心は日銀の政策決定に集中しており、短期的な指標の動きよりも政策判断が優先されて取引が進んだ。こうした状況下で国債の売りがさらに広がり、金利上昇の流れを後押しした。

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