G7報道を日本が否定 ロシア資産巡る説明を修正

浅川 涼花
经过
読了目安: 10 分

日本側説明を巡る論点整理

米報道機関「ポリティコ」が、日本がG7財務相会合でロシアの凍結資産を利用したウクライナ向け融資案を拒否したと伝えた問題で、日本政府は報道内容を全否定した。記事では、日本が法的な制約を理由に計画への参加を断ったと複数の欧州外交筋の証言として紹介された。しかし日本の財務省は、該当する発言自体が存在しないとして抗議を行い、記事撤回を求める姿勢を示した。財務省幹部は、ウクライナの資金需要が逼迫する状況で日本として何が可能か議論を行っただけだと説明し、報道内容とは異なると強調した。

報道された発言内容の相違点

ポリティコの報道は、日本が自国に保有する約300億ドル規模の凍結資産を融資原資に利用できないとG7会合で述べたとするものだった。だが、日本側は片山財務相がそのような説明を行った事実はなく、発言内容の引用が不正確だと指摘している。三村淳財務官は9日夜、記者団に対し「片山財務相は報道にあるような発言を一切していない」と述べ、記事は根幹部分から誤っているとの認識を示した。同時に、財務省として正式に抗議し、訂正または撤回を求める手続きに入る意向を明らかにした。

EU側との協議状況の説明

EUはロシアの凍結資産を用いた融資制度の構築を検討しているが、資産の大部分を管理するベルギーが、将来ロシア側から返還を求められた際の法的責任を理由に態度を保留している。こうした状況を受け、EUはG7各国へ枠組みへの参加を働きかけ、日本にも支援の拡大を求めている。欧州委員会の報道官は「日本を含め、複数の選択肢を調べている」と説明し、日本が拒否したとの米報道と異なる認識を示した。日本政府も協議は途切れていないとして、仕組みづくりに向けた調整を続けている姿勢を示した。

日本政府の姿勢と今後の焦点

日本政府は、ウクライナ支援の重要性を繰り返し表明してきたが、凍結資産の扱いについては国際法上の根拠や各国の制度環境が絡むため慎重な議論が続いている。財務省は、G7での議論は法的枠組みの確認が中心であり、報道されたような明確な拒否の意向を示したわけではないと説明している。今後は記事内容に対するポリティコ側の対応が焦点となり、G7内における議論の透明性も改めて問われる可能性がある。日本がどのような立場で支援スキームに関わるかは、ウクライナ情勢の推移とともに国際的な注目を集めている。

情報伝達の正確性を巡る課題

今回の経緯は、国際的な政策協議を巡る情報が報道によって大きく揺れ動く現状を示している。政府は、誤解を招く情報が拡散することは協議全体の信頼性を損なうとし、報道機関との適切なコミュニケーションの重要性を指摘した。今後の支援枠組みの形成には、各国間の立場調整だけでなく、正確な情報発信が欠かせない。日本政府は引き続き事実に基づいた議論を行う姿勢を示し、ウクライナ支援に向けた国際的枠組みの形成に関与していく方針を維持している。

この記事をシェア