新紙幣普及を後押しする機器更新
日銀が従来の紙幣の発行を実質的に終えたことが関係者への取材で確認された。新紙幣が昨年7月に導入された後も、対応が遅れていた自販機や券売機のため旧紙幣を提供してきたが、機器の更新が広範囲に進んだことで維持する理由が薄れた。これにより、新紙幣の普及が一段と進む環境が整いつつある。
継続供給の終了が示す段階的移行
日銀はすでに旧紙幣の製造を完了しており、今年9月末には1万円、5千円、千円の旧紙幣の市中への供給を区切った。ただし、災害時などに紙幣を急ぎ必要とする場面を考慮し、一定数は発行可能な状態を維持する。この方針は紙幣流通の安定性を確保するための措置であり、完全な廃止ではなく段階的移行であることが特徴だ。
自販機対応が普及遅れの最大要因
ATMや交通系システムはほぼ新紙幣対応を終えたが、自販機のみが最後の課題として残っていた。日本自動販売システム機械工業会によると、全国の飲料自販機約220万台のうち、9月末時点で新紙幣を扱える機器が6～7割に増加している。業界全体の改修が進んだことで、旧紙幣への依存度が大幅に下がった。
紙幣デザインの転換と歴史的役割
1984年に採用された福沢諭吉の1万円札は、長期間にわたり日本社会の中核的な紙幣として流通してきた。5千円札の樋口一葉、千円札の野口英世も同様に生活の中で親しまれてきたが、新紙幣の定着が進むとともに見かける頻度は減少していく見込みである。これら旧肖像の紙幣は、世代をまたいで使われてきた歴史的存在といえる。
新肖像が示す紙幣刷新の方向性
新紙幣では、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎が肖像として採用された。3人はいずれも日本の近代化に貢献した人物であり、刷新によって紙幣の象徴的な意味合いも更新された。今後は、新紙幣対応機器の普及がさらなる流通拡大を後押しし、刷新の効果が社会に浸透する局面を迎える。