インサイダー取引対策で課徴金制度を見直しへ

嶋田 拓磨
经过
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インサイダー取引事件の続発に金融庁が対応

近年、株式公開買い付け(TOB)に関する未公表情報をもとにした不正取引が、複数の金融機関や証券取引関係機関で立て続けに発生した。これらの事件は、業務上知り得た機密情報が違法に利用された事例として、金融市場の信頼性に大きな影響を与えている。

課徴金の引き上げを柱に抑止強化を図る

2025年6月25日に開催された金融審議会の総会で、金融庁はインサイダー取引への対策として課徴金の引き上げを含む規制強化に乗り出す方針を明らかにした。井藤英樹長官は、「市場の公正性を脅かす行為には厳格な抑止策が求められる」と述べ、制度改正の必要性に言及した。

今後の検討事項は算定基準と適用範囲

今後は、審議会内の作業部会において、課徴金の金額算定方法や対象となる取引範囲についての具体的な検討が行われる。金融庁は、実効性のある罰則制度を構築することで、違反行為の未然防止を図る狙いを持っている。

デジタル資産と地域金融に関する制度も議題に

審議会では、インサイダー取引以外にも、暗号資産の法的位置づけや、経営改善が求められる地方銀行などへの公的資金投入制度の延長についても議論することが示された。これらの制度変更は、来年の法改正を視野に入れて検討が進められる見通しとなっている。

課徴金制度の強化が金融市場に与える影響

課徴金制度の引き上げは、投資家の信頼回復と市場の透明性向上に寄与する一方で、金融機関のコンプライアンス体制の再構築を迫る可能性もある。今後の議論では、過剰な負担とならないバランスのとれた制度設計が求められる。

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